
ダイニーが9月から、リファラル採用を大幅に強化していることがダイヤモンド編集部の取材で分かった。同社はわずか3カ月前、違法性の高い退職勧奨によって社員の約2割を退職に追い込んだばかりだ。長期連載『スタートアップ最前線』内の特集「ダイニー“AIリストラ”の虚構」第4回の本稿では、リファラル制度の改定前後の報奨金額や条件を公開し、一見すると不可解な採用戦略を検証。するとダイニーの突然のリファラル強化策は、他のスタートアップ企業も安易に飛びつきかねない、典型的な迷走パターンであることが分かる。(ダイヤモンド編集部 永吉泰貴)
大規模リストラからリファラル強化
社内を揺るがす“迷走採用”の理由
本特集ではこれまで、ダイニーが6月に実施した退職勧奨の真相を追い、その手法が違法性の高いものであることを報じてきた(『【内部資料入手】ダイニー「恐怖の退職パッケージ」の全貌、退職勧奨の真相は“退職強要”だった!超少額手当で即時退職要求、拒めば強制異動で追い出し部屋へ』参照)。
リストラの背景にあったのは、海外投資家からの強い指摘である。1人当たりARR(年間経常収益)などの主要指標が、グローバルのスタートアップ上位層と大きく乖離(かいり)していたのだ(第3回参照)。この状況を受け、労働基準法第20条が定める解雇予告期間すら下回る異例の短期間で退職勧奨が敢行され、社員の約2割が退職に追い込まれた。
それからわずか3カ月。今度は一転して、リファラル採用を大幅に強化していることがダイヤモンド編集部の取材で分かった。
リファラル採用とは、社員が知人や友人を紹介し、入社すれば社員に報奨金が支払われる仕組みのことだ。ダイニーでは9月から、この報奨金を従来の2倍に引き上げ、支給条件も大幅に緩和した。社員の間では「今は知人にダイニーを紹介できる状況ではない。大規模なリストラから3カ月で採用を強化する意図が分からない」と困惑の声も上がっている。
一見すると不可解なリファラル採用の強化。しかし、スタートアップの採用事情に詳しいエンジニアリングマネージメントの久松剛社長は「ダイニーのような状況に置かれた企業がリファラルに活路を求めるのは、決して珍しくない話だ」と指摘する。
次ページでは、ダイニーのリファラル制度における改定前後の報奨金額や条件を明らかにし、この採用戦略が何を意味するのかを検証する。そこからは、他のスタートアップも陥りがちな迷走パターンが見えてくる。