週刊ダイヤモンドの「病院特集」も2007年以降はすっかり恒例の特集となり、毎年行なうようになりました。
「週刊ダイヤモンド」と言えば、昔からランキングを1つの売り物として来ましたが、今回の「全国47都道府県別の1173病院ランキング」は、今までにない病院ランキングとなりました。
というのも、必ずしも患者からみた「病院選び」という視点だけのランキングではないからです。
もう少し詳しく説明しますと、従来は、手術件数を中心にして評価しています。要するに、「胃がんの手術件数が多いのなら、胃がんの手術が上手で、胃がんの治療が得意な医師もたくさんいるだろう」ということを示し、だから「胃がん治療を受けるための病院探しの参考してください」というランキングなわけです。
その対して、今週号のランキングは、一言で言えば、「病院の経営力を測る視点」が入ったものになっています。
昨今、自治体病院の赤字が問題となっています。赤字の自治体病院をどのように再生して、存続させるのか、閉鎖すべきなのか、各地で議論されています。
このような議論がなされると、必ず出てくる意見が、「病院は非営利事業なのだから赤字でも仕方がない」「病院に利益の追求はなじまない」「赤字を出すくらいでなければ、よい医療を提供できない」というものです。
ましてや、自治体病院などについては、「小児や周産期、救急など採算性の悪い公的な医療を行なっているので、どんどん税金を出して救済すべきだ」という意見を聞きます。
でも、本当にそうなのでしょうか。
最近、病院経営者らと話をすると、「医療の質」と「病院経営」の両立について、本当に悩み、苦労していることがわかります。できるだけ患者によい医療やサービスを施そうとすれば、どうしてもコストがかさみます。
でも、そのぶん医療の質を落としてしまえば、病院としての存在価値がなくなります。
果たして、医療の質と経営力は両立するのか――。
今回のランキングと特集のテーマは、まさにそこに尽きるものです。
記者は各地に飛び、取材を重ねました。特集の趣旨を説明し、アンケートを送り、公開情報を寄せ集め、足りない部分は情報公開請求し、何度も電話をし、お願いしてデータを収集しました。病院側の対応も、さまざまでした。
さて、ランキングと取材の結果は……。
意外だったのは、税金などが投入されていない民間病院がかなり健闘していることでした。
一方、本来公的な医療を担うべき自治体病院では、小児科や産婦人科、救急の分野で受診制限をしたり、閉鎖している病院が多々見られました。その原因の多くは、医師不足によるものです。
通常、1年間で医師1人当たり1億~1億4000万円、整形外科や循環器などでは2億~3億円を病院収入として稼ぐと言われています(医師1人の年収ではありません)。
つまり、医師が1人が減ると1億円の収入が減ることになるわけです。当然、医師が減るということは、医療の質が著しく低下します。要するに、経営がある程度は健全でないと高度な医療サービスを安定して提供することができないのです。
ここまで説明すれば、どのような結果になったのか、推測できますね。
詳しくは、本誌をお読みください。
(『週刊ダイヤモンド』編集部 山本猛嗣)