安倍総理は、成長戦略として秋口にも設備投資減税を決定する意向を示した。しかし、わが国経済に必要なことは、小手先の投資減税でなく、地方税も巻き込んだ法人税改革のはずで、これがアベノミクス成長戦略の一丁目一番地だ。小手先の減税では、投資家、ひいては国民の理解は得られない。
アベノミクスの第3の矢、成長戦略が具体的な内容に欠けているという投資家の評価を受けて、安倍総理は、秋口に向けて設備投資減税を行うことを示唆した。
しかし、十分な議論なしでの拙速な投資減税(政策減税)は、以下のような問題点があり、市場の信任を取り戻すには十分なものとはなり得ないどころか、わが国経済・財政の在り方という観点からも問題がある。
法人税の企業行動に与える影響
第1に、現在わが国はすでに幾重にも投資減税を行っている。これに対する効果の十分な検証なくして追加的に減税を行うことは、財政資金の無駄使いに終わる可能性が高い。減税というアメで無理やり設備投資を増やせば、収益性の低い投資が行われるだけで、ますますわが国の成長力を弱めることになる。
第2に、わが国に必要なのは、租税特別措置による特定産業に対する税制優遇ではなく、経済空洞化や租税回避行為を防止し、海外から投資を呼び込む本格的な法人税改革(減税)だ。
法人税の企業行動に与える影響は、法定(表面)税率、平均(実効)税率、限界税率(追加的な所得に対する税率)の3つを分けて考える必要がある。
企業が、自国で生産するか他国で生産するかという決定に影響を及ぼすのは平均税率である。次に、一国での投資水準に影響を与えるのは、政策減税などを加味した限界税率である。最後に、多国籍企業の利益をどこに移転・留保するかという観点からは、法定税率が重要なメルクマールとなる。
わが国で今必要な政策は、他国へ投資を追いやらず自国経済の空洞化を防止し、外国からの企業を呼び込む平均税率の引き下げと、多国籍企業が低税率国に所得を移転させるプラニングを防ぐための法定税率の引き下げの両方だ。