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国際社会で主導的役割を担う大国が不在となる「Gゼロ」状態が続き、「自国第一主義」が蔓延している。また、AIの進展もすさまじい。特集『総予測2026』の本稿では、ユーラシア・グループ社長で国際政治学者のイアン・ブレマー氏に、2026年に国際社会が直面するリスクについて予測してもらった。(聞き手/国際ジャーナリスト 大野和基)
トランプ関税が最高裁で
「違法」とされる可能性
――2026年に注目すべき地政学的リスクは何ですか。特にGゼロ化、つまりグローバルリーダーシップの不在は今後どのような形で進行すると予測していますか。
Gゼロの状態は悪化するとみています。Gゼロ化は数年~10年単位で続く構造的な変化であり、米国や中国などの主要国、および国際機関が世界を牽引する能力を失い、「力の空白」が生じています。この状況は、世界史的に見て1930年代や冷戦初期に類似した不安定期に入っているとみています。そして、中国はこの空白を埋める機会を狙っています。
――26年、米国の第2次トランプ政権の経済・通商政策は日本・アジア企業にどんな影響を与えるでしょうか。
トランプ政権の関税引き上げは、アジア・日本からの輸出品に影響を及ぼし、輸出コスト増と利益率低下をもたらすでしょう。企業は米国向け供給網の再構築を迫られ、運用コストが上がる可能性があります。
ただ、最高裁判所で関税が違法と判断されると話は変わります。関税が撤回されると米国向け輸出のコストが減少し、米国内消費者にメリットになります。企業は、調整したサプライチェーンを再度見直す必要があるため、短期的には混乱するでしょうが、中長期的にはチャンスとなる可能性が高い。
もっともトランプ氏は、たとえ最高裁で関税が違法と判断されても、通商拡大法232条など別の法律で関税を課す可能性もあります。これは、米国が国家安全保障上の理由から特定の輸入品に関税や輸入制限を課す権限を大統領に与える法律です。
ブレマー氏は地政学的リスクに加えて、AI技術の急速な進展が26年以降のリスク構造に与える影響について、強い危機感を示す。また、AIの使用について再設計すべきと訴え、そのためには“中国との競争”を再構築することから始めるべきと言う。それはなぜか。さらに、国際社会に対して高市早苗政権が取り組むべき課題についても、次ページ以降で縦横無尽に語っている。







