先週に続き、年金問題をテーマに取り上げたい。

 1月13日付産経新聞1面に、厚生年金の記録改竄に関する記事が掲載されていた。厚生年金の「標準報酬月額」が実際より低く申請されていたケースが発覚したのだという。新たな、年金記録問題だ。

 標準報酬月額というのは、年金の掛け金を決めるための収入の換算方法で、毎年4~6月の平均月収を基に算出し、30等級に分かれている。厚生年金は、労使で保険料掛け金が折半される仕組みとなっている。今回のケースでは、会社が掛け金負担を軽くするために、本来の給料に見合う分よりも、標準報酬月額を少なく申告していていた。

 さらにたちの悪いケースとしては、従業員から掛け金を徴収しておきながら、標準報酬月額の下方修正をしてお金を浮かせているケースもあったようだ。年金記録確認第三者委員会に持ち込まれた相談のうち、昨年末までに832件の年金記録訂正が認められたが、その中で、昭和50年代以降の記録から10件の改竄が見つかったという。

社会保険事務所が
改竄を教唆した可能性も

 経営状態が悪く規模が小さい中小・零細企業では、厚生年金に加入すること自体が経営者にとっては負担である。そこでなんとか費用負担を減らせないかと考えるうちに、こうした操作に手を染める可能性はある。また、企業負担は、実質的には加入者の負担でもあるから、現在、厚生年金は、加入することが、加入者にとっても得でない可能性の大きな年金だ。但し、払っていると思った掛け金が払われておらず、将来の年金額が少ないことに、老齢になってから気付くというのでは拙い。

 もちろん虚偽申請が可能となる背景には、社会保険事務所のチェックの甘さがあるが、産経新聞の記事によると、社会保険事務所側が改竄に関与していた疑いがあるという。社会保険事務所としては、出費を惜しんで厚生年金に加入しない事業所を何とか加入させて加入率を高めたい。ただ経営者としては、加入すると費用負担が増えるので、加入を嫌がる。そこで社会保険事務所側から、標準報酬月額を小さくすれば負担も減る、という改竄教唆のケースがあったのではないかと、記事には書かれている。これまた、いかにもありそうな話だ。