多くの人にとって、この大学の名前は初耳かも知れない。高度職業人の養成を主眼とする専門職大学院は幾つかの類型に分かれるが、そのどれにも当てはまらない大学院といえるだろう。映画専門大学院大学は、主に映像プロデューサー、映画プロデューサー、コンテンツ製作者を養成する大学院である。

 もっとも肝心なのは「ディレクター(監督・演出)」ではなく「プロデューサー(制作・製作者)」を養成する大学院であることだ。つまり、芸術系の大学院ではなく、さらに門戸は広い。映画製作のための財務、会計、メディア、マーケティング、法務、広報など、およそ社会科学系の講義が網羅されている。すなわち経営・経済・法律といった学部のバックグラウンドや、社会での経験との親和性が高いのである。なまじのMBAより実践的。なおかつ、対象が「映画」であるという魅力を持っている。

クリエイターのみならず
ビジネスパーソンも挑戦可

 映画を嫌いな人間はいないし、いっぱしの意見を言う人間も珍しくない。しかし大学院レベルで突き詰める人間は少ない。芸術家ならぬビジネスパーソンが、映画を専攻することのできる大学院の存在は、貴重で希少だ。事実映画製作、コンテンツ制作のスキルは、映画会社だけでなく各種メディア、放送局、出版社、広告代理店とは近縁であるし、自治体など公務員の職場でも生きる。プロデュース=製作は、ひと握りのクリエイターのものではなく、むしろエグゼクティブらしいジョブである。

 実際、コンテンツ立国は国策ですらある。東京大学や東京藝大に映像系・コンテンツ系の大学院が続々設置される時代。自分には関係ない、と思うと見えてこない現実である。実際は、ビジネススキルを持ったプロデューサーの養成は急務なのだ。映画の大学院は、修士号をとってから、そのありがたさが判るタイプの大学院である。

 映画専門大学院大学の素性はよく、東放学園が設立母体。テレビマンやアナウンサー、映像・音響系のクリエイターを目指す若者たちには抜群の知名度を誇る。名前から察せられるように、もともとは東京放送(TBS)が設立した学校。その学校法人が新たに学校法人東放学園大学を設立し、この大学院を設置した。学部を持たない大学院大学であり、専門職大学院。学部4年間のバックグラウンドを問わずに、新しいジャンルのスキルと学位を獲得するための大学院である。

 場所と時間割が絶妙である。所在地は東京の西新宿、都営地下鉄大江戸線、西新宿五丁目駅から校舎が見える。そして時間割は、土日にそれぞれ5コマを置き、平日は水・木・金のみ夜7時半から1コマのみの配置。土日に履修を集中させ、よほど忙しい社会人でも通える工夫がされている。都内勤めだけでなく、近郊からの通学も十分に可能だろう。新宿駅というターミナルの存在を考えれば、鉄道や高速バスを使って、かなり遠距離からの通学も可能になる。

 ローリング・アドミッションという、出願以降、順次入学選考を行なうスタイルが、社会人のためには優しい仕掛けだ。翌年4月からの講義開始を踏まえて、合格をまず確保してから勤務先との調整が可能。簡単に言えば、合格してから上司に申し出ても余裕がある。また、奨学金や学費ローンの手配も早くなる。ちょうど7月16日から、来年4月入学の出願が開始されたところである。

映画専門大学院大学