霞が関で、民間企業も驚きの“カイゼン”が進んでいる。舞台は、審査官を含めて約2800人の職員を抱える特許庁である。

 昨年7月に始まった庁内の改革プロジェクトは、グローバル化やイノベーションの進展に対応できる組織ミッションの提示に始まり、各業務フローの見直しにまで至っている。「個々人の質が上がれば、たとえ別の役所に勤めてもツブシがきく」(特許庁幹部)。経済産業省の外局である特許庁のブランドイメージの底上げを狙おうというのだ。

 具体的には、庁内すべての業務プロセスを可視化し、プロジェクトチームで洗い出した問題点を一気に改善した。この1年間で40以上の事例がある。加えて、全国各地の中小企業を個別訪問し、制度や庁に関する要望を聴取、随時ホームページ上で回答し、改善に取り組んだ。

 また、管理会計の手法を導入、監査法人をコンサルタントとして採用し、中長期的なコストの洗い出しを実施、特許関連では55億円、商標関連では155億円の料金引き下げが可能であることを明らかにし、今年4月の料金引き下げに踏み切った。

 さらに、審査基準改定の際には日本だけではなく、欧米の企業や大学、たとえば米マイクロソフトや米IBMなどからも広くパブリックコメントを集めるなど、これまでにない変化が起きている。

 7月16日には、「日本版コミュニティ・パテント・レビュー」を開始した。昨年6月の米国に次ぐ、世界で2番目の取り組みになる。具体的には、ウェブサイトに出願案件を一部開示し、企業や大学などの研究者や技術者からの知見を受け付ける。

 本気になれば、役所だって変われるということを、特許庁が示している。

(『週刊ダイヤモンド』副編集長 遠藤典子)