台北市で、鴻海精密工業でEV(電気自動車)事業の最高戦略責任者(CSO)を務める関潤氏と再会した台北市にて、鴻海精密工業でEV(電気自動車)事業の最高戦略責任者(CSO)を務める関潤氏と再会した(写真は筆者撮影)

4月上旬、日産自動車時代の元同僚であり、台湾・鴻海(ホンハイ)精密工業でEV(電気自動車)事業を率いる関潤さんに会ってきた。iPhoneの受託生産で世界的企業に成長した鴻海は今、「AI・半導体・次世代通信」を武器に、EV分野で自動車産業の変革に挑もうとしている。その鍵を握るのが、設計・開発と製造を分ける「水平分業」という考え方だ。半導体業界では、台湾TSMCのような受託製造企業と、設計に特化したファブレス企業の分業が世界標準になった。では、クルマも同じ道を歩むのか。連載『志賀見聞録 自動車産業の半世紀とミライ』の第10回【ミライ編5】では、「擦り合わせ」こそが自動車産業の競争力の源泉だと考えてきた筆者が、鴻海のEV戦略と「自動車ファブレス化」の可能性を考察する。(日産自動車元COO〈最高執行責任者〉 志賀俊之)

>>第1回【過去編1】「ゴーンさんが羽田空港で逮捕されたらしいです」(2018年11月19日から)読む

>>第6回【ミライ編1】ホンダがEV戦略見直しで「2.5兆円損失」を発表した日(2026年3月12日)から読む

鴻海・関氏にEV受託戦略について直撃
自動車産業に「ファブレス化」は起こるのか

 台湾のIT産業の集積地である新竹市に出掛ける用事があり、その途中で立ち寄った台北市で、日産自動車時代の同僚である関潤さん(以下、関氏)と会う機会があった。4月8日のことである。

 関氏についてはご存じの読者も多いだろう。台湾を本拠とする世界最大の電子機器受託製造サービス(EMS)企業グループ、鴻海(ホンハイ)精密工業でEV(電気自動車)事業の最高戦略責任者(CSO)を務めている。

 私と関氏との付き合いは長い。2014年に彼が日産の中国事業の責任者に任命されたとき、19年に日産副COO(最高執行責任者)からニデックへの転職を決めたとき、そして23年にニデックから鴻海に移ったときーー。キャリアの節目ごとに接点があり、その背景にはそれぞれに深いいきさつがあった。

 本音を言えば、その舞台裏について語りたいところもある。しかし本稿では、論点を「自動車産業にファブレス化は起こるのか」に絞りたい。台北で関氏から直接聞いた、鴻海が進める「EV受託生産ビジネスの勝算」について考えてみたい。