判断を見誤らないために

出雲 自身の力以上の仕事にチャレンジしようという気持ちがなければ伸びていかないのはわかりますが、新さんからご覧になられて、そのチャレンジ精神は今の若い人たちに一般的に備わっているものだと思われますか?

 超例外的な人、つまり背水の陣という気持ちでチャレンジできる人は、涙が出るくらい少ないですね。そして、超例外的な人でなければ出雲さんのような起業家にはなれないでしょうね。

 いつダメになるかわからない状況において、それでもアカウンタビリティを感じながらチャレンジに背を向けない人。そういう起業家や会社を、日本にもっと増やさないといけないと思っています。だから私は、若いアントレプレナー(起業家)をサポートする活動に力を入れているんです。

出雲 新さんのような方が我々の世代を鼓舞してくださるのは、とても有意義なことだと思います。しかし、修羅場になりうる「無理」と単なる「無茶」の違いを当事者が見極めるのは、難しいことではありませんか?

 そうですね。

 私は子どものころ、不思議でしょうがなかったことがあるんですよ。雨が降っていて、しばらくすると雨が止んで晴れ間が見えてくるでしょう?そうすると「どこまでが雨で、どこまでが晴れなのかな」と。境界線はあいまいですよね。無茶と無理の境界線も同じ。それはきわめて主観的なもので、当事者が見極めるのはたしかに難しいんですよ。

 だから、できれば会社側と話をして、この組織で自分がどういう役割を担って、どういう成果が見込まれているのかというビジネス的な観点をはっきりさせておくべきでしょうね。それもないのに「とにかくやれ!」では、それこそ無茶というものです。若干のビジネスの計算やノルマを想定できるならば、それは無理の範囲と考えていいでしょう。