昨年12月に官民から1500億円の支援を受けることが決まったルネサスエレクトロニクス。しかし、出資金はまだ振り込まれず、経営計画は白紙の状態が続いている。
経営計画がないまま今期の4分の1が過ぎてしまった──。
半導体大手、ルネサスエレクトロニクスの経営再建が足踏みを続けている。政府系ファンドの産業革新機構と、トヨタ自動車など8社から1500億円の支援が決まったのは昨年12月。それから半年以上たっているが、本稿執筆の7月24日時点で、いまだに出資金が支払われていないのだ。
出資金が払い込まれないことで、ルネサスの経営計画が存在しない“空白期間”が生まれている。2013年度の業績見通しや中期経営計画は、出資完了後に発表するとしているためだ。
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「経営戦略は検討中だが(公表)時期は答えられない。出資完了後、できる限り早く公表できるよう革新機構と協議を進めている」
6月26日の株主総会。経営計画をいつ公表するのかと株主にせっつかれた鶴丸哲哉社長は、頭を下げるしかなかった。
契約では、出資金は今年9月末までに振り込むという条件になっているため、現時点で払い込みがなくともルール上は問題ない。しかし、この経営計画の不在が、ルネサスのビジネスに少しずつ影を落とし始めている。
「ルネサスは本当にうちから調達するつもりがあるのか」
こう神経をとがらせているのはルネサスに部材を納入しているあるサプライヤー。13年度のルネサスの業績見通しの数字が明らかにされないため、今期の取引量が読めないのだという。さらに、ルネサスの顧客からも「利用中の半導体は今後も製造を続けるのか」といった問い合わせが急増している。取引先からの圧力がここにきて強まっている理由の一つは、6月中に出資が完了するという期待があったからだ。ルネサス内部からも「これ以上、経営計画が白紙のままでは取引先への説明がつかない」と悲鳴が上がり始めている。
ルネサスは出資を受け入れるため着々と準備を進めてきた。3月には出資の前提とされた追加リストラについて、三千数百人規模の早期退職を実施することを公表。5月下旬に、革新機構の朝倉陽保専務ら2人を社外取締役に選任する議案を、6月の株主総会で上程することを決めた。就任は出資完了後という条件付きとはいえ、株主総会までに払い込みが完了するのは“既定路線”とみられていた。