2013~15年、米国経済の回復を軸に、世界経済も底堅いとみている。この追い風に乗れば、アベノミクスは円安・株高とともに前進できる。この楽観シナリオに対するリスク要因は、第一に米財政・金融政策の「出口」への勇み足、第二に欧州債務問題の再燃、第三に中国経済の予想以上の悪化、である。
とりわけ中国問題は実態が不透明な分、不安が増幅されやすい。中国は、08年の米国発の金融危機に際して果敢に政策発動し、世界経済の立ち直りに貢献した。中国のありさまを為替管理された人民元の観点から見てみよう。上のグラフが示すように、中国は長年高成長と経常黒字を計上しながら、通貨は割安に抑えられてきた。
中国が、米欧の元切り上げ要求に恭順したかに見える場面もあった。しかし、下のグラフは、元が主に国内インフレ動向に合わせて管理されてきたことを示す。発展途上の中国には大量の余剰労働力があり、彼らが低賃金で製造業に移動して生産性を高める間はインフレ圧力も限られた。インフレ抑制的な環境では、元を割安に保つことができ、高成長と経常黒字を促す主因の一つになり得た。