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シリコンバレーで考える 安藤茂彌

シリコンバレーで「日本のこれから」を話し合う

安藤茂彌 [トランス・パシフィック・ベンチャーズ社CEO、鹿児島大学特任教授]
【第71回】 2013年9月2日
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 独立してベンチャー起業家になる道もあろう。スタンフォード大学のロバート・エバハート教授が面白い研究をしている。同教授は日本に行ってワインを販売するベンチャー企業を立ち上げ、それを売却して金持ちになった人である。彼は日本でベンチャー企業を創業する人の創業時の平均年齢は41歳であることを発見した。米国での平均年齢も41歳だった。20-30歳代というイメージを持っていたが意外に高かった。日本での起業は歳をとるほど失敗の確率が下がる傾向にあるとも指摘している。

 現行の解雇条件をそのまま存続すれば、企業は窮地に追い込まれてから大規模なリストラをするしかないが、その後遺症は大きい。大規模なリストラを実施して再出発した企業は多々あるが、日本航空という特殊な例を除き、再建に成功した企業は少ないように思う。元の事業規模に戻れた企業はほとんどないのではないだろうか。一旦縮小均衡に陥ると、挽回するのがいか如何に難しいかを物語っている。

 窮地に陥ってから大規模なリストラを行うよりは、普段から外部者を中途採用しながら余剰人員を整理していくほうが、大きな苦痛が伴わずに持続的成長を維持していけるように思われる。社員を内部者と外部者の混合配置にすれば、社内にはなかった新しい考えを取り入れられる。新しい血と混ぜ合わせることで、クリエイティブな企業に変身できることもあるだろう。そのことをシリコンバレーの企業が教えている。

 アベノミクス第3弾には、解雇条件の緩和と並んで外部者の積極採用をぜひ加えてほしい。実践した企業には法人税を減税する等の措置を取れば、企業の変革に勢いがつくだろう。これによって、外資系企業で異なる経験をした人材を呼び寄せられるし、職のないポスドク(博士号を取得したが職の見つからない人々)に就業のチャンスも与えられる。その上で競争環境を醸成するような各種インセンティブを導入すれば、社内の活性化を早期に図れるように思う。

 スカウトする対象は日本人に限る必要はない。外国人でも構わない。社員の英語力向上にも役立つだろう。ただ外部人材の定着を図るには、一人だけではなく数十人を採用して彼らの孤立化を防ぐのが望ましい。その際に気をつけなければならないのは、いままでの評価基準を変えることである。間違っても、同種の内部者と比較して格差があるのはおかしいといった議論をしてはならない。横並びの秩序が大切なのではない、労働力の価値が大切なのだ。

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安藤茂彌
[トランス・パシフィック・ベンチャーズ社CEO、鹿児島大学特任教授]

1945年東京生まれ。東京大学法学部卒業後、三菱銀行入行。マサチューセッツ工科大学経営学大学院修士号取得。96年、横浜支店長を最後に同行を退職し渡米。シリコンバレーにてトランス・パシフィック・ベンチャーズ社を設立。米国ベンチャービジネスの最新情報を日本企業に提供するサービス「VentureAccess」を行っている。VentureAccessホームページ

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シリコンバレーで日本企業向けに米国ハイテクベンチャー情報を提供するビジネスを行なう日々の中で、「日本の変革」「アメリカ文化」など幅広いテーマについて考察する。

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