資産増はまず富裕層が購入し始め、
さらに401Kがきっかけで広がった
加藤 ボーグル氏は資金流出が続く中も、いろいろな機会をとらえて、インデックスファンド、長期運用、低コストの効用を説き続けたそうです。そのうち、その合理性に気付いた人たちが、少しずつバンガード社のインデックスファンドを買うようになりました。
最初にインデックスファンドのメリットに気付いて、それを買ったのは、大学教授やお医者さん、弁護士、そして何と金融機関の関係者など、知識・合理的判断力に優れ、経済的にも余裕のある人たちだったんです。
中野 たしかに金融や投資リテラシーが高い人が多そうですね(笑)
加藤 やはり、インデックス運用のメリットに気付くためには、それまでの投資経験も必要ですし、物事をきちっとロジカルに考えられる頭脳も必要だと思います。まず、その層が発火点となり、次第にメディアも取り上げるようになりました。こうして最初の成長期に入っていくのです。
中野 セゾン投信の顧客も、実は金融関係者や金融関係のマスコミの皆さんが多いですよ。そうですか、それで世界一になったんですね?
加藤 でも、実際に、ここまで資産規模が拡大した背景には、他の理由もあります。それは401Kプランがスタートしたことです。米国では90年代から、401Kプランが普及していったのですが、このプランは年金運用に伴うリスクを、年金加入者、つまり企業の従業員に持ってもらうというものです。もちろん、一方で大きなリターンが実現すれば、それも従業員のものになるわけですが、リスクを従業員に負ってもらうためには、きちっと従業員に対する投資教育を施さなければならない。そこで、ジョン・ボーグルの考え方が、ぴったり当てはまったのです。
中野 つまり、年金のような長期投資にはコストが安いインデックスファンドの運用が適しているということですね。
加藤 そうですね。結局、投資というのは下手に銘柄を選ぼうとしても、あるいはタイミングを選ぼうとしても、うまく行かないものなのです。もちろん、たまたま偶然にもうまくタイミングが当たり、高いリターンが得られるということもあるでしょう。でも、それを長期で続けていくのは容易なことではありません。
大概は大きなリターンを得た後、逆に大きなロスを被ってチャラにしてしまうというパターンの繰り返しです。いや、チャラならまだしも、逆に最初に得た利益を超える損失を被るケースもある。つまり、投資は、銘柄やタイミングを当てに行ってはいけないということです。
このように、長期投資をするうえで当たり前の話を、ボーグル氏は説き続けた。その結果、米国の大企業を中心にバンガードの考え方が広まり、運用資産世界一の運用会社に育っていったのです。
中野 日本でも少しずつではありますが、個人がインデックスファンドの良さに気付き始めています。まだ先は長いと思いますが、少しずつインデックス運用や国際分散投資のメリットに気付いてもらえるよう、啓蒙活動を続けていきたいと思いますね。
加藤 インデックス運用は素晴らしいのですが、唯一欠点があるとしたら、それはつまらないことですね。でも、長期の資産形成を目的にした運用というのは、そういうものです。ハラハラドキドキはギャンブルですからね。
あと、インデックス運用に関しては「初心者に適している」という誤解があるのですが、インデックス運用が持つ合理性は、投資の初心者だけでなく、経験者にも大いにメリットとなるはずです。その意味でインデックスファンドは、万人にとって有益な運用ツールになると思います。
次回は9月11日更新です。
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