銀行の存在感は低下していく一方
いったい何が起こっているのか?
「半沢直樹はどこにいるのか? いませんよ。銀行さんは最低限の仕事をこなしてくれさえすればいいです」──。
ある大手製造業の財務担当者は淡々と言った。
テレビドラマ『半沢直樹』が日本中を席巻している。その舞台となっているメガバンクもまた、近年ないほどに世間の注目を浴びている。しかし、その注目度の高まりとは裏腹に、この財務担当者は、「銀行の存在感はこの10年で低下していく一方です」と話す。
いったい銀行に何が起こっているのか。『週刊ダイヤモンド』は今回、リスクを取って融資をする半沢直樹のように頼れる銀行はどこなのか、金融業を除く上場企業3359社を対象にアンケート調査を行い、362社から回答を得たところ、冒頭の証言を裏づける回答が多数寄せられている。
具体的には、「近視眼的な提案ばかりではなく、少し先を見据えた提案もしてほしい」(製造業)、「数字だけの評価が多く、製品や技術のよさがわかる銀行員が少ない」(製造業)、「銀行は、『産業を育てる』という責任感を持ってほしい」(卸売業)と厳しい意見が少なくない。
中には、「法人営業担当のミスが多く、上場企業との取引に求められるレベルを理解できていない」(流通)という苦情まで寄せられるありさまだ。
どうしてそうなってしまったのか。三菱東京UFJ銀行の上席調査役は、「内部管理の仕事が悲劇的に増えている」ことを理由に挙げた。行内でのデスクワークに忙殺され、対顧客にかける時間は10年前の3分の1程度に減ったという。
「1日に回れる取引先は2件くらい。昔は多い日なら7件は回っていたけどね」。上席調査役はこう投げやりに語るが、内部管理にきゅうきゅうとして、本業がおろそかになっては主客転倒だ。
銀行員として致命的ともいえる指摘もある。「メインバンクとしての意識が低下している」(サービス)というのだ。 かつて企業の主要取引銀行であるメインバンクといえば、常日頃からその企業に出入りし、財務状況もしっかりと把握していた。その企業がひとたび経営危機に陥れば、即座に金融支援に乗り出して再建に尽力する。そんな存在だったはずだ。