グルジアが、欧米の首脳たちを悩ませている。
だが、それは日本ではあまり知られていない。無理もない。首相が続けてふたりも政権を放り出し、お祭り騒ぎの総裁選に明け暮れている国である。
グルジアについては、フランスのサルコジ大統領とロシアのメドベージェフ大統領による停戦合意後も、すんなりと和平への道を歩むには至っていない。停戦合意は度々破られ、双方に犠牲者が発生している。
グルジア紛争は8月8日に発生した。同じ日、北京オリンピックの開会式に出席していたブッシュ米大統領は、同じく観戦していたプーチン首相と即席の「首脳会談」を開いた。勃発したばかりの紛争について話し合ったとされるが、1ヵ月以上経った現在もなお、その内容は伝わってこない。
グルジア紛争は、米大統領選にも影響を与えている。紛争発生時、ハワイで休暇を取っていたバラク・オバマ民主党候補は、ロシアへ理解を示したことでバッシングの対象となってしまった。替わりに、即日グルジアに飛んだバイデン上院外交委員長の評価が上がり、結果、オバマ氏は彼を副大統領候補にしなくてはならないほどまでに追い詰められた。
共和党副大統領候補のサラ・ペイリン氏もグルジア紛争について言及し、リベラルな米国民をぞっとさせている。ロシアが再びグルジアを攻撃した際には報復するのか、という記者の質問に対して「もちろん、そうするつもりよ」とあっさり回答している。
先に仕掛けたのは
ロシア側という情報も
グルジアは米ロの代理戦争の場と化している。背景には黒海沿岸からの石油・ガスパイプラインの敷設権の争いが絡む。ロシア経由のエネルギー供給に依存している欧州諸国の立場も今回は微妙だ。米国に足並みをそろえるといった単純構造にはなっていない。
ロシアはそうした米欧の乱れを突くようにして、グルジアに圧力を掛け続けてきた。
「15年間守られてきた南オセチアの和平を破ったのはグルジアの方だ。8月8日の未明、南オセチアの問題を武力で解決しようとして、突然、街を攻撃し、罪のない多くの民間人を殺したのだ。グルジアの許しがたい虐殺行為を国際社会が許しているのが理解できない」
こう語るのは、ミハエル・ガルージン駐日ロシア公使だ。昨夜(9月16日)、筆者がキャスターを務める『ニュースの深層』(朝日ニュースター)に出演し、世界に広がる反ロシアの風潮に釘を刺した。