2000年3月はアメリカがITブームに沸いていましたが、バークシャー・ハザウェイの運用成績は過去最低でした。バフェットはハイテク産業にいっさい投資をしていなかったため、一部の人たちの間では「さすがのバフェットも勘が鈍ったのではないか」と噂されていました。しかし、彼は「自分の理解できない事業には投資しない」と、けっして考えを曲げませんでした。
その後、ITバブルがはじけて、バブルに踊った多くの投資家が損をしました。そのときバフェットは記者からの質問に対し、一言だけこう答えています。
「自分の持っているものを理解していれば、何も問題はなかったはずです」
その後、ITバブルと縁のなかったバークシャーの株価は値上がりし、バフェットの正しさを改めて印象づけたのです。
「能力の輪」の境界をきちんと知っておこう
バフェットはマイクロソフトのビル・ゲイツ会長とも親しく、ハイテク産業の見通しが明るいことを知っていました。しかし、自分はハイテク産業については理解できないから、そのような事業に投資するのは大変リスキーな行動だと考えたのです。
「おそらく、マイクロソフトのビル・ゲイツ氏も、私たちと同じ原則に従っていると思います。私がコカ・コーラやジレットの事業を理解するように、ゲイツ氏はハイテク産業の事業を理解しています。そして、私と同じように安全余裕度を考慮しています。もちろん、株をただの紙切れとしてではなく、会社の一部とみなしているはずです」