中国の胡錦涛国家主席は、3月のチベット暴動後、初の外遊先として日本を訪れている。

 初日の昨日(5月6日)は、歓迎夕食会で、死んだばかりの上野動物公園のリンリンに代わるパンダ2頭の貸与を申し出て、さっそく両国の友好関係をアピールすることに成功した。

 そしてきょう(7日)、福田首相とのぞんだ日中首脳会談では、10年ぶりの共同文書を発表し、日中間の「暖かな春」を演出、ひとまずは及第点をあげた形になっている。

 1972年の日中共同声明、1978年の日中平和友好条約、1998年の日中共同宣言に続く第4の「共同文書」だが、その内容は〈歴史を直視し、未来に向かい、「戦略的互恵関係」の新局面を切り開く〉と冒頭にあるように、昨年の安倍前首相訪中時に発表した共同プレス文書の内容と大差はない。

 むしろ、重要なのはその後の共同記者会見だ。そこで「チベット問題」と「オリンピック開会式」という微妙な問題に触れたことこそ、今回の訪日の最大の目的だったといっても過言ではないだろう。

チベット問題での対応を
「高く評価」した福田首相

 とくに注目する点は、日本側の福田首相にその問題について言及させたことだ。その瞬間、胡主席の今回の訪日はほとんど成功したとみてもいいだろう。

 北京オリンピックの成功こそがすべてに優先する現在の中国にあって、福田首相の次の二つの言葉は、パンダ2頭ではお釣りがくるほどの嬉しいプレゼントとなった。

 「要するに、チベット問題などに対してどういうふうに対応し、解決していくのかがまさしく戦略的互恵関係というふうに考えております。ですから、そのためにも、率直な対話とか協議といったようなものは欠くことができません。そういう意味でも、本日、胡主席と相当長い時間にわたって会談したということは、大変大きな意義があるというふうに思っております。チベット情勢については、主席の対話をするという決断と実際に話し合いを行ったということについて高く評価をしております」