ダイヤモンド社刊
1890円

「経験豊かな経営者は、業績をたちどころに測る公式などないことを知っている。自動車がダッシュボードにいくつかの計器をつけなければならないように、会社の経営にも、いくつかの計器が必要である。それほどは必要ない。5つもあれば、自社がいかに事業を行っているか、正しい方向に向かっているかを知ることはできる」(『実践する経営者』)

 業績を評価するための第1の計器は、市場シェアについてのものである。シェアは増大しているか。特に、重要な市場、将来性のある市場でのシェアはどうか。個々の市場のシェアを見ていかなければならない。

 業績とは、過去、現在、未来についてのものである。重要なのは未来の業績である。したがって、重要なのは利益ではない。利益とは過去の業績にすぎない。

 第2の計器はイノベーションについてのものである。イノベーションの実績は、市場シェアに見合っているか。将来性のあるイノベーションは行ったか。分野ごとにイノベーションの実績を見ていかなければならない。

 第3の計器は生産性についてのものである。人的資源の生産性は伸びているか、知的労働の生産性はどうか。資金の生産性はどうか。

 第4の計器はキャッシュフローについてのものである。ドラッカーは、キャッシュさえあれば、利益が出なくとも、かなり長いあいだやっていけるという。逆は真ではない。キャッシュが底を突き、将来性のある部門を手放さざるをえなくなることは多い。

 したがって、現金のポジションを弱めるような売り上げの伸びによる利益の増大は、危険信号だという。「将来性があっても、実際に資金需要が生じる前に対策を講じなければ、折角の新事業も超特価で売却させられることになる」。

 第5の計器は収益性についてのものである。収益性とは、利益幅に資金の回転率を掛けたものである。したがって、利益幅と回転率の双方をよくする必要がある。

「問題は絶対値ではない。傾向である。勾配である。数字は大雑把であってよい。問題は数字のトレンドである。トレンドについての情報がなければ、自分たちの業績がどうなっているか、正しい方向に進んでいるかどうかの見当がつかない」(『実践する経営者』)