中国インターネット検索サービス最大手のバイドゥが、日本で携帯電話によるモバイル検索サービス事業に参入し、9月28日からサービスを開始した。
バイドゥは、検索サービスで中国では70%超の圧倒的シェアを持ち、検索回数では米グーグル、米ヤフーに次いで世界第3位の実績を誇っている。だが、2008年1月、満を持して進出した日本市場では、ヤフーとグーグルの二強に9割超のシェアを押さえられ、残り数パーセントの「その他グループ」に甘んじている。
日本事業の立ち上げに苦戦している最中に、新たにモバイル検索事業にも参入するのは、「パソコン(PC)の検索サービス競争は長期戦だが、携帯電話は今がチャンス」(井上俊一・バイドゥ日本法人社長)だと判断したからだ。
ネット人口が9000万人を超え、成熟しつつある日本のPC検索サービス市場は、パイの奪い合いになっている。一方、モバイル検索市場は、大手から中小まで十数社が入り乱れて事業を展開しており、「玉石混交の状態」(業界関係者)。市場勃興期の今がチャンス、というわけだ。
さらにここにきて、携帯電話向けコンテンツの充実や、米アップルのアイフォンなどモバイル検索に適したスマートフォンの急速な普及によって、モバイル検索市場が立ち上がる環境が整いつつある。
バイドゥの強みは、技術開発力にある。中国屈指のハイテク企業である同社には、おのずと全国から優秀なエンジニアが集まってくる。今回リリースするモバイル検索サービスでは、他社のサービスでは検索結果に含まれる絵文字が表示されないのに対し、業界で初めて完全表示を実現している。
しかし、技術的優位性だけでは、過酷な競争を勝ち抜くことはできない。バイドゥの最大の課題は、知名度の低さにある。使ってもらえなければ、優位性も伝わらない。PC検索サービスの提携パートナーを増やしてバイドゥというブランドの認知を広めていくとともに、「網羅性、即時性、相関性といった検索サービスの質を高めていく」(井上社長)方針だ。
独自の種の進化を遂げたガラパゴス諸島にたとえられる日本の携帯電話市場。ここでの勝敗が、今後、PCの検索サービス競争にも大きな影響を及ぼすことは間違いない。
(『週刊ダイヤモンド』編集部 前田 剛)