三菱自動車が優先株の処理策と、中期経営計画を発表し、経営再建のめどがついた。だが、グローバルな自動車業界で再編が進む中、自力成長には限界がある。新たな壁が立ちはだかっている。
長きにわたった経営再建の“総仕上げ”の舞台に、仏ルノー・日産自動車連合との協業深化のニュースを添えること──。益子修・三菱自動車社長は、この演出にこだわっていたという。
11月5日、三菱自動車は、軽自動車の開発で提携している日産との協業範囲を拡大すると共に、日産の親会社であるルノーとも新たに提携する、と発表した。翌6日には、懸案だった優先株の処理策と2016年度を最終年度とする新中期経営計画を発表し、再建にめどをつけた。益子社長の狙い通りに事は進んだ。
リコール(回収・無償修理)隠し問題を発端に経営危機に陥った三菱自動車は、04年に独ダイムラー・クライスラーに支援を打ち切られ、三菱グループの御三家(三菱重工業、三菱商事、三菱東京UFJ銀行)の管理下での再生を目指した。三菱グループを中心に総額6000億円の優先株(議決権がない代わりに、残余財産の分配や配当を普通株よりも優先的に受け取ることができる株式)を引き受け、一時は、御三家からの出向者は100人を超えていた。
9年越しの再建終了が近づいたことに、「時間がかかった。リーマンショックがなければ、優先株の処理はもっと早く終わっていた。ようやく再建会社から普通の会社へ戻る」(益子社長)と振り返る。
その言葉通り、再建期間が長引いたことは事実だが、リーマンショック後に、自動車各社が大赤字に転落する中で、三菱自動車は09年3月期に営業黒字を確保できていた。北米事業の赤字を止血したり、タイへ生産拠点をシフトしたりするなど、事業・地域の「選択と集中」を早期に進めたことで基礎体力がついていたのだ。経営資源を集中させたASEAN地域など新興国で販売を伸ばし、今期は営業利益1000億円の大台に乗せる予定だ(図(1))。
業績回復に加えて、優先株の処理にもめどをつけた。今期中に、2100億円規模の公募増資を実施し、そこで調達した資金を三菱グループ4社(御三家+三菱UFJ信託銀行)が引き受けていた優先株の買い取りに充てて消却し、残りは普通株に転換する。