「未来は、望むだけでは起こらない。そのためには、いま意思決定をしなければならない。いま行動し、リスクを冒さなければならない。必要なものは、長期計画ではなく戦略計画である」(『マネジメント──基本と原則[エッセンシャル版]』)
そこでドラッカーは、「必要なことは、まず戦略計画といえないものを知ることである」と言う。
第1に、それは、魔法の箱や手法の束ではない。思考である。資源を行動に結び付けるための思考である。それは、「われわれの事業は何か」という問いへの答えとしての行動である。
したがって、それは意思決定に何かの手法を適用することではない。思考、感性、判断、夢、決意を適用することである。
第2に、それは、予測ではない。未来の主人になろうとすることではない。そもそも、未来を予測するなどということは不可能である。「戦略計画が必要となるのは、まさにわれわれが、未来を予測出来ないからである」。
しかも、予測は可能性を見つけようとするものであり、戦略とは可能性を変えようとするものだからである。
第3に、それは、未来における意思決定にかかわるものではない。現在の意思決定が未来において持つ意味にかかわるものである。問題は、明日何をなすべきかではない。明日のために、今日何をなすべきかである。
ドラッカーは、時に痛烈である。「われわれは、明日行う意思決定について計画を作成しがちである。楽しいかもしれないが無益である」と言う。意思決定を行うことのできるのは、今日だけである。明日は永遠にやって来ない。
第4に、それは、リスクをゼロにしたり、最小にしたりするためのものではない。そのような試みは、際限のないリスクと、確実な破滅を招くだけである。
あらゆるものにリスクがある。特に、経済に関しては、リスクをなくそうとすることは、徒労であるばかりでなく、際立って危険である。
「戦略計画に成功するということは、より大きなリスクを負担出来るようにすることである。それこそ、起業家としての成果を向上させる唯一の方法だからである」(『マネジメント[エッセンシャル版]』)