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「デジタルな日常」を生きる

生徒も教員も「授業」について考えるきっかけに
――松阪市立三雲中学校のiPad導入で現れた変化

松村太郎 [ジャーナリスト・著者]
【第9回】 2013年12月16日
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 「教員室の中で、iPadが教科の垣根を越えた共通の話題として挙がるようになってきました。また、先生にとっても生徒にとっても保護者にとっても、始めは楽しいがだんだん飽きっぽくなっていく。そこで、実際に役に立った、という実感を伴った体験をいかに作っていくか、がとても重要でした。

 初年度は、『フューチャースクール』という言葉にとらわれすぎていました。iPadを既存の授業に合わせて、時間的な効率が高まるもの、学び方や体験が広がるものに集中することで、悩みが解消されていきました」(楠本氏)

 こうした実験を通じて、iPadを上手く教育にブレンドする感覚をつかんでいくと同時に、どのように実感を持って先生方がiPadについて、またiPadを教育に活用する方法について学び、研修する時間を確保していくか、という学校での一般的な課題への対処を、2年目に体験しながら解決の糸口をつかむ経験をしてきた。

教員の異動、転勤が当たり前の中で
ノウハウを共有し、継承する

 川田校長は、中学2~3年生がiPadを活用する最もよい時期だと指摘する。

 「小学校では考える力、書く力を養うべきで、デバイスの使い方よりも前にやることがあります。中学1年生を転換点に、それまで学んできたリテラシーや知識の上に乗っかる形で『活用力』を養うことが大切ではないか、と思います。またこれは教員にとっても同様で、教える力をインフラにして、その上でiPadをいかに使うかを考えなければなりません」(川田校長)

 公立の中学校の場合、ノウハウの蓄積が最大の課題だという。校長も含めて、人材は非常に流動的で、長期にわたって同じ学校に残り続けることは希だ。三雲中学校に入ってくる教員は新たにiPadを活用した授業作りを行わなければならず、別の学校に移る教員は行った先の学校で引き続きiPadを活用した教授法を実践できるかが課題となる。

 授業でiPadを活用する手法は、現場の教員が納得する形で導入することが求められるが、同時に、人事やチャレンジを認めるなどのトップダウンでのサポートもまた、重要な要素となる。

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松村太郎
[ジャーナリスト・著者]

まつむら・たろう/1980年生まれ・米国カリフォルニア州バークレー在住のジャーナリスト・著者。慶應義塾大学政策・メディア研究科卒。慶應義塾大学SFC研究所上席所員(訪問)、キャスタリア株式会社取締役研究責任者、ビジネス・ブレークスルー大学講師。近著に「スマートフォン新時代」「ソーシャルラーニング入門」など。

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スマホ、SNSなど、毎日の暮らしに欠かすことのできなくなったネット環境とデジタルツール。その一方で、セキュリティやプライバシーの問題、ツールへの依存、ネットコミュニティとの関わり方など、日々新たな問題が現れ、状況は変化している。私たちは「デジタルな日常」をどう生きていけばいいのか、米国シリコンバレー在住の記者が、生活者の目線で解説する。

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