世界最大の年金基金である年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)。先日、政府の有識者会議で運用ポートフォリオの見直しについて提言が出されたが、とりわけ注目を集めたのが、ROE(株主資本利益率)などを重視した企業400社を選んだ株価指数「JPX日経インデックス400」の活用が盛り込まれたことだ。しかし、三谷隆博理事長は、「週刊ダイヤモンド」のインタビューで、「TOPIXからの全面的な切り替えはあり得ない」と断言、新たなインデックス運用への大幅な採用に否定的な見方を初めて示した。

――現在、GPIFが保有する日本株の8割がインデックス運用で、それらのベンチマークはすべて東証平均株価指数(TOPIX)です。日本取引所グループ(JPX)と日本経済新聞社が11月に発表した新しい株価指数「JPX日経インデックス400」に対する率直な印象を聞かせください。

みたに・たかひろ/大阪市出身。1971年東京大学法学部卒業、日本銀行入行。横浜支店長、政策委員会室長、理事、日本IBM特別顧問を経て2010年4月から現職。
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 考え方は悪くないと思います。経営者に企業がROEを高めてもらうようにするという考え方には前向きな印象を持っています。しかし、運用するにはいろいろ問題がありますね。

 過去3年平均を使うと聞いているので、毎年入れ替えるのでしょうけども、ROEが上がってきている銘柄は、業績が上がっているということで割高に評価される可能性が高い。一方で、指数から外れそうな銘柄もわかるわけです。

 ですから、運用する立場から言えうと、株を高く買って安く売ることになる。それで本当にいいのか、というところは、ちょっと引っかかっています。株の入れ替えも含めて、詳しい話を聞きたいなと思います。事務ベースでは、ざっと話はうかがっていますが、こちらとしてももう少し分析したいと思っています。

 それと、仮に新指数を取り入れるとなると、現在、保有株の8割がTOPIXをベンチマークにしていますから、(TOPIX銘柄に入っているが日経JPX400に入らなかった)残り1300銘柄を売らないといけないわけですね。

 以前みたいにどんどんお金を入ってくるときなら、配分をどうしようかと考えられますが、今はもう(年金支給のために)出ていく一方です。ですから、株式の中で入れ替えるとすると、1300銘柄を売って400銘柄を買うことになる。そういう実務的な難しさの問題はありますね。