ゼロ秒思考をつくるメモの書き方

 ゼロ秒思考を身につける最短、最良の方法は「メモ書き」だ。

 「メモ書き」は、元々は私がマッキンゼーに入社した際、インタビューの仕方、分析のやり方、チームマネジメント等で役立つアドバイスを先輩から多数いただき、それを漏らさず書き留めよう、書き留めたうえでしっかり理解し自分の物としよう、というプロセスから生まれた。

 ただ、数千ページ書き、多くの人にも書いてもらううちに、メモを書くと自意識を取り払い、素直にものを考えられるようになることに気づいた。1分という制約の中で、素早く迷わず、相当量を書き出すことが鍵だったと考えている。

 「メモ書き」は、こわばった頭をほぐす格好の柔軟体操であり、頭を鍛える手軽な練習方法だ。頭に浮かぶ疑問、アイデアを即座に書き留めることで、頭がどんどん動くようになり、気持ちも整理されるようになる。自意識にとらわれ悩むことがなくなっていく。「メモ書き」により、誰でも、この境地にかなり早く到達できる。自分でも驚くほど頭の回転が速くなる。

 具体的には、A4用紙を横置きにし、1件1ページで、1ページに4~6行、各行20~30字、1ページを1分以内、毎日10ページ書く。したがって、毎日10分だけメモを書く。たとえば図のメモのようになる(なお、ここではメモ上の実際の行数ではなく、ダッシュ「-」で始まる項目を「行」と表現する)。

 こんな単純なものでいいのか、と思われるかもしれないが、簡単で気軽にできるところがポイントだ。

 図のメモは、ある大手流通業で、部下1000名ほどの地域本部営業リーダーが書いたものだ。非常に優秀な方で受け答えも普段は素晴らしいが、部下に対してはすぐ怒鳴りつけてしまう。「怒鳴りつけることで部下は萎縮するし、いいことは何もない」と本人は私に話してくれるが、部下に対してはついやってしまう。それをなんとかしようと彼が書いたメモだ。