前回まで4回ほど、50代の役職定年時期の人材タイプを4つほど見てきた。望ましい人材イメージは新たな役割を前向きに受止め、自分の活躍場所を楽しむ「生き生き現役」人材タイプだった。

本稿第6回で、その割合は15~25%くらいと推定したが、そうすると何がしか問題を抱える人材の割合は75~85%といえる。では、このたいそうな割合を占める50代社員に対して、企業として、どんな対策を講ずべきだろうか。

 40代後半からのキャリアの停滞感は、50代になると出向・役職定年等によってキャリアの離脱・下降が鮮明になってくる。本人の中では、この時期に訪れたキャリアショックに対し、これを受け入れる過程で生まれる様々な煩悶や諦めを乗り越え、自分なりに新しい環境で生きていくための、“心の仕切り直し”を行っている。

 人事部などが対策を講じる上で起こる大きな問題は、多くの方が遭遇する、役職定年前後の心情変化やモチベーションのダウンは、ある種の観察眼をもって注意深く観察しないと、周囲からは見えないことだ。ともすると、見えやすい逸脱傾向の著しい一部の問題社員に対する課題が、50代シニア層の全体課題に置き換えられ、本質を見誤った対処・対応をしてしまう企業も多い。もっといえば、自分がその当事者として扱われるとき、「対策」や「対応」が必要な社員として見られることを、だれが喜ぶだろうか?この点を人事やキャリア支援を行う担当者には理解してほしいと思う。

 つまり、その支援は、50代社員の心のひだを読んだ、様々な配慮あるものにしていかないと、かえってヤル気を削いだり、希望をしぼませてしまう結果になる。

 連載の後半となる今回からは、少し視点を広げて、この見えにくい問題を取り上げ、50代社員を生き生き現役社員にするためには、どんな課題があるか、そしてこの課題を解決していく上手い方法とはどのようなものか、を探っていく。「問題社員のトリセツ」に焦点を当てるというよりは、本質的な課題の理解や組織的対処の仕方について論じてみたい。今回はその前段として、キャリアショックを乗り越えるために、当事者である50代社員はどのような考え方で臨めばよいか、その解決の手がかりを探っていくことにする。