地球温暖化と山火事――。その“恐怖”の相関関係に警鐘を鳴らすのは、10万人以上の科学者と市民からなる国際的な非営利団体(NPO)「憂慮する科学者同盟(UCS)」に所属するブレンダ・エクワゼル博士だ。このままでは、高温と乾燥の悪循環で森林が燃えて消えていくと警告する。(聞き手/ジャーナリスト 矢部武)
Brenda Ekwurzel (ブレンダ・エクワゼル) |
昨年10月に発生した南カリフォルニアの山火事は1週間以上にわたり燃え続け、甚大な被害をもたらしたが、問題は地球温暖化現象で山火事の危険性がどんどん高まっていることだ。
もともとこの時期は雨が少なく、砂漠からの季節風もあり乾燥しているが、原因はそれだけではない。気温上昇が山間部の雪解けを早め、夏から秋にかけて土地や木をいっそう乾燥させ、山火事が起こりやすい状況をつくっている。
イエローストーンの山火事(1988年)は2万5000人の消防隊員と1億2000万ドルの巨費を投じたが消火できず、結局3ヵ月も燃え続け、12月に雪が降り出してようやく鎮火した。2006年に米国が費やした山火事の消火活動費用は約17億ドルに達したとの試算もある。
カリフォルニア州では、この30年で大規模な山火事が約4倍に増えた。温室効果ガスを吸収する木が大量に失われ、気温上昇と山火事の頻発を招く悪循環にはまっている。
昨年の南カリフォルニアの山火事だけで約200万トンの二酸化炭素が排出されたが、これは44万台のクルマの年間排出量に匹敵する。しかもこの二酸化炭素の約20%は今後800年も大気中に残り、私たちの子どもや孫はおろか何十世代にもわたって悪影響をもたらす。
カリフォルニア州の年間平均気温はこのまま温暖化が進むと今世紀末に最大で4.4~5.8度(セ氏)上昇すると予測される。そうなると、熱中症、呼吸器障害、心臓病、感染症などの健康障害も深刻になる。
大都市では、すでに気温上昇で排ガスの光化学反応が加速し、ぜんそくや心臓発作などが増えている。最近の調査で、心臓病の人は家の中よりクルマの運転中に発作を起こしやすいことがわかった。大気中の有害物質を吸い込むことで、発作が起こりやすくなるのだ。
また、気温上昇は海面の水位も押し上げ、大洪水や水没の危険性を高める。100年に一度起こっていた大洪水が、10年に一度になるかもしれない。