英国の料金低下は送配電料金低下のため
自由化による発電競争が要因ではない

 第二に英国。英国については、自由化が開始された1990年以降を3つの時期に区切って論じている。1990年代半ばまでの上昇期(第1期)、2000年代初頭の下降期(第2期)、現在に至るまでの再上昇期(第3期)である。1/11論考は、このうちの第2期を競争促進によって料金が下がった好事例と見ているが、この見方が妥当かどうか吟味してみよう。

 図2を見ると、1/11論考が分析の対象としている残差が一本調子で下がっているのは1990年代後半であり、2000年代初頭はむしろ横這いに見える。

◆図2:海外での電力自由化による家庭用料金変遷(英国、ATカーニー分析)……「1/11論考」より抜粋

 1990年代後半とは、どのような状況にあったのか。英国では、1990年に国営電気事業を分割民営化して新たな発電会社が3社生まれたが、すぐにこれらによる発電市場の寡占が問題視され、保有電源の一部売却が進められていた。その結果、1990年代後半には発電市場の集中は緩和され、競争的な市場になったとされている(図3)。

 それでは、実際の電気料金はどうなったか。図4をご覧いただきたい。一番下の太い線が卸電力市場の価格であるが、ほぼ横這いであることがわかる。競争促進のために電源の売却を進めた効果が、この段階では現れていない。しかし、同じグラフの一番上の家庭用電気料金の推移を見ると、1990年代後半に一本調子で下がっていて、これは図2とも整合している。

 なぜ、小売料金は下がったのか。卸電力価格が下がっていないので、少なくとも発電競争の成果ではない。小売料金が下がっている要因として考えられるのは、送配電料金が引き下がったことだ。

◆図3:英国(イングランド・ウェールズ)における発電電力量の事業者シェアの推移

(出所)金本良嗣「電力産業における市場制度設計に関するメモ」(第8回電気事業分科会資料)のp3の上図
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◆図4:英国における小売電力価格及び卸電力価格(プール引出価格)の変遷

(出所)小笠原潤一「海外諸国の電力改革の現状」(第3回電気事業分科会資料)のp28の図
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 当時の英国では、1990年の国営電気事業の分割民営化で誕生した送電会社や地域配電会社の儲け過ぎが問題になっていて、規制当局が送配電料金に対する規制(上限価格規制)を強化していた。

 規制の内容は地域によって違うが、地域配電会社の一つであるロンドン・エレクトリシティ(現在は香港資本の傘下にあり社名はUK Power Networks)を例にとると、1995年に14%、1996年に11%、1997年から99年は各3%、2000年には21%、それぞれ配電料金を実質で引き下げるよう規制が強化されている。