安倍首相のアフリカ歴訪、ここでもまた日中間で火花が散った。安倍総理が訪問先のエチオピアで「資源の獲得や輸出先の確保のためだけの投資は行わない」と発言。これにカチンと来た中国外交部は、安倍首相が表明した多額の支援に「ちゃんと実行できるか、お手並み拝見」と、嫌味たっぷりに切り返した。
「中国に追いつかないと」
舵を切る日本のアフリカ支援
日本ではここ数年、中国のアフリカ支援に対する関心が高まっている。2013年6月、第五回アフリカ開発会議(TICAD V)が横浜で開催されたが、安倍総理は民間資金も導入しての官民合計3兆2000億円の資金協力を打ち出し、官民挙げての長期的なアフリカ支援を打ち出した。日本のアフリカ開発は「援助」から「投資」へと、大きく舵を切り替えた。絶好調ともいえるアフリカ経済の成長に対し、戦略的マスタープランを構築し、電力や運輸、インフラ整備などを中心とした都市開発を行うことで後押ししようというものだ。
この日本のアフリカ支援の変化の裏には、中国のアフリカ支援の在り方が影響しているとさえいわれている。
日本は、1993年にアフリカ開発をテーマとする日本主導の国際的な政策フォーラム「TICAD」の第1回会議を発足させ、従来の希少資源がある南部アフリカ中心の局地的な関係から、全方位の関係へと転換した。03~07年まではアフリカ向けODAの平均値は9億ドル、その後12年までに倍増する計画が打ち出されたが、それでもまだアフリカ支援は緒に就いたばかりだったともいえる。
その延長線上に現れたTICAD Vでの大胆なコミットメントは、援助からビジネスへの転換をも示唆するものであり、日本の専門家からは「『日本もその中国に追いつかないと』という意識の現れが、このTICAD Vでもあった」とのコメントも漏れる。
ちなみにJETRO資料 によれば、2011年末の累計で、中国の対アフリカ直接投資は150億ドル(1ドル=約79円として1兆1850億円)、他方、援助額は09年末の累計で1171億元(1元=14円として1兆6394円)にのぼる。投資分野はエネルギー、金融、製造、サービス、農業、交通など幅広い。
しかし、中国のアフリカ支援、その“中国式”のやり方には「資源略奪者」以外にも、「自然環境の破壊」「対中感情悪化」「土地争奪」「不平等取引」などさまざまなレッテルが貼られ、日本を含む西側先進国は危機感を高めている。その大きな特徴は、アフリカを援助の対象としてだけではなく「ビジネスの対象」と見据え、中国から大量の資本、物資、労働者などを送り込み、資源開発を行う国益重視の色彩の強さだ。