メタボリックが気になる中高年サラリーマンの間で、ダイエットのために筋トレに精を出す人が増えてきているようです。会社帰りにジムに寄って、あるいは自宅でダンベルを使って汗を流す。その意気や良し、と言いたいところですが、ひとつ気になることがあります。
もしかしたら、こんなやり方をしていませんか? 筋肉を効率よく鍛えるために、できるだけ重い負荷をかけている。時間が限られているので、屈伸のスピードは速めにしている――。気持ちは分かりますが、実はこれ、筋肉のメカニズムに疎い素人の方が陥りやすい落とし穴。とりわけ、ダイエットに関してはほとんど無駄骨に近いとか。
筋肉は大別して速筋と遅筋とに分けられます。速筋は表層筋ともいって体の表層部にあり、収縮速度が速く、主に跳んだり走ったり、体を速く動かすときに使われます。
いわゆる“筋肉ムキムキ”も、もっぱら速筋を鍛えたものです。一方の遅筋(深層筋)は外からは見えない体の深層部にあり、主に姿勢を維持する役目を担っています。速筋のように目立たないので筋トレでも軽視されがちですが、ダイエットをしたいのなら、この遅筋を重点的に鍛えなくてはなりません。
スポーツ科学の第一人者、宮崎義憲・東京学芸大学教授によれば「速筋のエネルギーがブドウ糖であるのに対し、遅筋のエネルギーは脂肪。どちらを刺激したほうがダイエットに有効かは自明の理」ということになります。
この遅筋を鍛えるポイントは「軽い負荷をゆっくり、長くかけること」。
前記のように「重い負荷を速く」かけても、脂肪を燃焼させない速筋ばかりを鍛えることになってしまうわけです。ちなみに、宮崎教授は「遅筋を鍛えるならダンベルやマシンは必要ない」として、かわりにつま先立ちをすすめています。
3分間、背筋を伸ばして、ゆっくりつま先立ちを繰り返す。これを1日3回つづければ、十分ダイエット効果が出てくるそうです。
(竹内有三 医療ジャーナリスト)