――インフラの約9割は国ではなく地方自治体のものだ。景気の停滞が続く地方都市などに目を向けた場合、保全作業を含めたインフラ対策は財政的に難しい話ではないか?

 その予算はないだろう。日本全体で3割足りないのだが、その率を計算すると、3割どころではなく予算が数倍足りない自治体も存在する。

 ただ、ここで問題になっている老朽化というのは今すでに老朽化しているものではなく、これから老朽化していくものについてである。今は騙し騙し使っていてもなんとかなるが、なんとかならない状態がやって来る事を考えると、早急に手を打たなければならない問題だ。

 その中で、予算を3割増やすのではなく、現在の予算を維持しながら、パフォーマンスを向上させるという方法に持っていかなければならない。生産性で3割の向上が難しいとなれば、不必要な事業がないかを見極めることも必要ではないだろうか。たとえば、学校が10校あるとすれば、3校を統廃合するといったオプションも議論されるべきだと思う。

すでに老朽化問題を経験した米国
財源は借金ではなく増税で確保

――巷では「オリンピック特需」に期待が集まっているが、それによって税収が増え、結果的にインフラ対策に使える予算が増えるという可能性はあるのか?

 そもそも、インフラや公共事業を需要面から見る考えが間違っていた。これは経済学者の間違いでもあるのだが、インフラというのは需要面だけではなく供給面もあり、インフラの供給力を維持するために膨大な費用がかかるという事実を忘れがちになっている。

 これまでは工事をすれば需要はできるだろうという考えのもとで次々と景気対策が実施されてきた。供給面の分析が行われてこなかったために維持が困難な状態に陥ったのが現在の姿なのだ。

 ケインズ経済学が言う、公共事業が雇用対策にいいというある部分だけがクローズアップされ、そこだけが取り出され便利に使われてきたのが日本なのだ。造ったものは造り直さなければならないという大切な部分が抜けていた。

 造り直す段階で需要が生まれるという楽観論もあるが、付加価値がなければお金を返せないし、工面もできないだろう。特需が起きれば見かけの景気対策は可能だと思うが、それを維持していくための次世代の負担はさらに大きなものになってしまう。

――主要国でのインフラ対策というのは、どこも同じようなものなのか?

 なぜ日本でこれだけ問題になるのかといえば、急激に整備した反動で急激にインフラの大量老朽が発生してしまったのだ。これを100年の計でインフラを作っていれば、インフラの保全作業などがある時期に集中して行われることはないだろう。民間企業の投資では、景気がよかろうと悪かろうと、一定の投資を続けるので老朽化の問題に直面しないのだ。

 また、町づくりは長い時間をかけて行われるものなので、多くの国ではこういった問題が深刻化することはない。日本は1960年代から70年代の間に、15年ほどかけて集中的にインフラ整備を徹底的に行ったのだ。