このような短期間でのインフラ整備を行った国は日本とアメリカだ。アメリカは1930年代に当時のルーズベルト大統領主導でニューディール政策が行われている。

 60年代の日本と30年代のアメリカに共通するのは、短期間でどんどん道路や橋などを作り続けることが一番の目的であったことだ。アメリカでは橋の完成から50年以上が経った80年代に、崩落などの事故が相次ぎ、交通インフラの寿命についても真剣に考えられるようになった。仮に寿命を50年と考えた場合、日本でインフラの老朽化が問題化するのは2020年代からとなる可能性が非常に高い。

 80年代のアメリカで、老朽化したインフラ対策のために、財源を増やす目的で取られた手段が増税だった。借金ではなく、増税をしたのだ。増税は利用者が痛みを直接感じるものでもあり、ここがポイントだった。ガソリン税という目的税で増税を行ったため、利用者は税金の使い道を把握することができた。

 日本は一般財源になっているため、税金の細かな使い道を知るすべもなく、それが増税に対して大きな拒否反応を抱かせる一因になってしまっている。例えば東京都がインフラ税導入に向けて動きを見せ、インフラ税の必要性を都民が自ら考えて判断してもいいのではないだろうか。増税もしないし、予算も減らさないというのは、政策としては間違いだと思う。

東京五輪を構想の中心に据え
老朽化対策に本腰を入れるべき

――6年後に開催される東京五輪と全国の自治体が直面している老朽インフラ対策はどちらもカネのかかる事業だが、この2つは共存できるのか? それとも、どちらかを優先的に行うべきなのか?

 老朽インフラ対策には先に述べたように年間8.1兆円のコストがかかるのだが、全額を捻出するのは不可能な話なので、少ないインフラをどれだけ有効活用できるかが重要になる。隣接する自治体に似たような施設がいくつもある場合、それぞれの市民がそれらの施設を問題なく有効活用できるのなら、施設の統廃合を進めていくべきだろう。このような広域連携は病院などではすでに開始しており、複数の公立病院が統合して新しいものに建て替えられたというケースはすでに数例ある。

 2020年大会が国内のインフラ対策に何らかの相乗効果を与えるとするならば、それは6年後のオリンピック開催が決定したことで、中期的な目標設定が可能になる事だろう。

 この先の10年間は、タイミング的にも老朽インフラ対策を徹底して行うべき時期だ。これまでは抽象論で老朽インフラ対策が語られてきたが、2020年に東京五輪開催が決まっため、これを有効活用しない手はない。東京オリンピックの負担はまず都民が追うべきであり、都民として真剣に考えなければならない。

 オリンピックだけでは何も変わらないが、オリンピックを老朽インフラ対策の構想の真ん中に据えて、どれだけ本腰を入れて行うことができるかがポイントとなるだろう。

 

(編集部注)
掲載後、根本祐二・東洋大学経済学部教授より、より詳細な説明を頂きましたため、記事内容をより充実させるために、主に以下について、2月14日(金)17:00ごろ、変更致しました。

・ 2p目、下から3段落目
「年間で20兆円」→「年間で20兆円(名目GDP)」
・ 3p目、上から2段落目
「年間1〜2兆円」の後に(注)を追加
・ 3p目、上から3段落目
「ただ、そのなかにはアウトソーシングは入っておらず、民間企業を使おうという話は出ているものの、予算を増やさずに仕事を効率化させるためには」→「そのなかにはアウトソーシングは入っていないが、もちろん有効だ。ただし、老朽化問題を解決するためには」
・ 3p目、下から3段落目
「これらの事故の原因は明らかになっていないが、一般的には」を追加。
・ 4p目、下から5段落目
「ケインズ経済学が雇用対策にいい」→「ケインズ経済学が言う、公共事業が雇用対策にいい」
・ 4p目、最終段落
「集中的にインフラ工事を徹底的に」→「集中的にインフラ整備を徹底的に」
・5p目、上から2段落目
「日本でインフラの老朽化が問題化するのはこれからの10年となる可能性が非常に高い。」→「日本でインフラの老朽化が問題化するのは2020年代からとなる可能性が非常に高い。」
・ 5p目、上から4段落目
「政策としてはウソだと思う。」→「政策としては間違いだと思う。」
・ 5p目、下から5段落目
「オリンピックは少なくとも国税は使わないという前提があるので、税負担に関しては都民だけの話になるだろう。」を削除
・5p目、下から2段落目
「東京オリンピックの負担はまず都民が負うべきであり、都民として真剣に考えなければならない。」を追加。