見向きもされなかった炭鉱が“宝の山”に変わる技術に育つか。水分含有量が3~4割と多く、未利用だった低品位石炭(褐炭)に、実用化の道が開けてきた。
神戸製鋼所は褐炭を高品位炭へ改質する技術の実用化に成功したのだ。年内にもインドネシアで実証プラントを稼働させ、2012年の商業運転を目指す。
褐炭はカロリーが低いのみならず、空気と触れると自然発火する性質を持つ。そのため、長距離輸送や長期保存が不可能という致命的欠点を持っていた。一方で、燃焼の際の硫黄分や灰の生成が少なく、それらの処理費用がかからないことや、環境負荷が低いなどのメリットも併せ持つ。
神戸製鋼は褐炭を天ぷらのように“揚げる”ことで水分を飛ばし、油分(アスファルト)で包むことで自然発火を抑えることに成功した。簡単そうに聞こえるが「世界中で開発競争をしていた」(村越久人・石炭エネルギー部次長)なかで一番乗りを果たした。
開発競争の背景には、この1年で石炭価格が2.5倍に値上がりしたことからもわかるように、世界的な需給逼迫がある。今日でも世界の一次エネルギー源として、石炭は石油に次ぐ重要資源。発電用などに需要は増加中だ。
埋蔵量に余裕があると思われがちだが、高品位炭は半分しかない。しかも低コストで掘れる地表近くの高品位炭は枯渇が近づいている。
褐炭の利用が拡大していけば、結果的に高品位炭の需給も緩むとあって、改質技術が待ち望まれていた。とはいえ、この技術は、オイルショック時に着手した石炭液化の研究が30年以上も継続されて実ったもので「継続は力なり」を象徴するような技術である。
神戸製鋼はプラントの販売に徹し、自らが鉱山を所有することは考えていないという。だが、将来的には日本発の新技術を利用して鉱山開発をするなど、国家的な資源戦略への組み込みが期待され、電力会社や商社も大きな関心を寄せている。
(『週刊ダイヤモンド』編集部 鈴木 豪 )