Mt.Goxのケースも、それ似たようなものではないのでしょうか。私は個別事例についてはほとんど何も知らないのですが、Mt.Goxに悪気があったかどうかは別にして、起こったことはMt.Goxが売ったビットコイン採掘者や取引者用のサービスの中に、病気の馬や壊れかけの荷車が混ざっていた、というような話だろうと思います。

 ですからそれは、ビットコインそのものがインチキであるとかないとかということとは別の話ですよね。ゴールドラッシュ時のカリフォルニアでいろんな事件が起こったということはたぶん間違いないのですが、だからと言って、ゴールドラッシュで掘り出された金がニセガネだということにはなりません。それと同じことです。

 ただ、私は、そういうこととは別の観点から、今のビットコインには、どうも問題がありそうだと思っています。後で述べますが、可採埋蔵量に比べて過大に多くのビットコインが掘り出されてしまっている、しかも、ビットコイン掘りというブームが起こった時には、すでに相当量が掘り出された後だったのではないかということです。

ビットコインは
仮想空間上の「実物貨幣」

――ビットコインの仕組みを簡単におさらいすると、ます09年に「サトシ・ナカモト」という人物の理論に導かれる形で発行が始まりました。ビットコインは、たとえて言えば、ネット上で数式ゲームを解くことによって発行されます。一般の人が利用するには、「ウォレット」と呼ばれる財布を、PCあるいはスマートフォンに開設する。そしてウェブ上にある取引所や両替所で円やドルなどの通貨を支払い、ビットコインを入手して、ビットコインを受け入れる店舗で商品やサービスを買い、ビットコインで支払うということですね。

 最大の特徴は、日本銀行やFRB(米連邦準備制度理事会)といった通貨を発行する発行主体がないこと、コインとは言っても電子データの列で、しかも銀行のネットワークを介さないので、決済のコストが非常に安いことだと言われています。その意味では、ビットコインは「貨幣」と言ってよいのでしょうか。

 そうです。貨幣です。もう少し正確に言えば、貨幣以外に使い道がない代物であるという意味で、確かにビットコインは貨幣です。よく貨幣の代表のように言われる金だって、冷静に考えると貨幣として使う以外にはあんまり役に立ちませんよね。ビットコインは音楽ファイルのように再生して楽しむという用途がなく、ただ交換手段あるいは決済手段として使えるというだけの電子的データだという点では、やはり貨幣ですし、また貨幣でしかないのです。