自腹分の年間活動費140万円!
カネがなければ競技はできない

 日本の場合はどうなのだろうか? ロンドン・パラリンピックを取材し、現在はソチでパラリンピックの取材を行うジャーナリストの矢萩邦彦氏は経済的な事情でパラリンピックに出場できないアスリートは少なくないと指摘する。

「パラリンピックはお金が無いと参加できません。遠征費も自腹ですし、パラリンピックに出たくても経済的事情から出られない人は相当数いるはずです。企業によるサポートにしても、パラリンピックとオリンピックとでは金額のケタが全く異なります」

 活動資金は大きな問題だ。ロンドン・パラリンピック開幕前の2012年8月、日本パラリンピアンズ協会はロンドン大会と2010年のバンクーバー冬季大会に出場したアスリートやスタッフ約300人に聞き取り調査を実施。

 そのうちの232人から回答を得たが、競技を継続するうえでもっとも大きな問題として「費用がかかる」という答えが全体の64パーセントに達していた。年間活動費の自己負担分が平均で140万円を超える実態も判明し、北京大会と比較して、自己負担金は30万円以上増えていたのだ。

 この調査を見ると、足りない財源を国が補助したり、より積極的に企業や個人からの寄付を集めたりする活動をして資金を確保すればいいではないかと思ってしまう。だが、事はそれほど単純ではないようだ。

 日本ブラインドサッカー協会の松崎英吾事務局長は「障害者スポーツを取り巻く環境やインフラで、日本が非常に遅れを取っているとは思わない」と前置きしたうえで、6年後のパラリンピック東京大会に向けての展望を語る。

「他の競技団体と財源について意見を交わすことがあり、その際に行政にもっと援助してほしいといった話になるのだが、その前に我々が正さなければならない襟はたくさんある。そこを捉えられない限りは、2020年という大きな追い風が来ても最終的にボトルネックは競技団体に残ったままになるだろう。まずは我々自身が変わらなければならない」

 つまり、資金を得る前に、その資金を運用する側の競技団体に、透明性や健全性を確保する、ガバナンス体制を確立することのほうが先なのではないかというのだ。

 しかし、慢性的な資金と人材不足に晒されてきたなかでは、競技団体にそれらを求めるのも酷な話だ。障害者スポーツが抱える資金と人材の課題は、直接関わる選手やその家族、運営に関わる人だけで解決できるものではないのは明らかだ。

 まずは、社会全体で解決する問題として、国民一人一人が当事者意識を持つことが、解決への第一歩となりそうだ。

 本連載では、引き続き2020年東京パラリンピックへ向けて日本が抱える課題、さらに障害者スポーツの現状を取材し、レポートしていく。