桜井 いったい、どのような経緯で商品開発の手法が陳腐化してしまったのでしょうか? <獺祭>、そして日本酒のさらなる可能性を探究して日々模索を続けている私たちにとっても、時代を先進してきた無印良品の挫折の背景に何があったのか、非常に気になります。

松井 右肩上がりの快進撃が続いて社員の誰もが自信満々になってくると、「オレたちはこれでいいのだ」と内向きで議論し合うようになるんですね。その矢先に、SPA(製造小売り)という手法を用いて、私たちと同等の品質の商品を3割安く販売するニトリさんや、問屋との仕入れ交渉を通じてあらゆる商品を100円で提供するダイソーさんなどが台頭してきました。

 しかも、その頃には無印良品の店舗数はピークに達していて、従来と同じ手法での商品開発もままならなくなってきました。そうなると、世の中の一歩先を進む商品が作れなくなってしまうわけです。挙げ句、2000年には既存店の売上が激減し、初めて“対前年比減益”という挫折を経験することとなったのです。

 商品力が落ちてきて、お客様がそれを敏感に感じ取り、我々の店の前を素通りするようになる。無印良品としては、創設以来初の大きな危機を迎えました。私が社長に就任したのは、まさにそのような逆境の最中である2001年でした(以下、後編)。


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