商船三井が中国側に40億円を支払うことで、船舶の差し押さえは解除された
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中国の上海海事法院(裁判所)が商船三井株式会社の船舶を差し押さえたが、それは中日戦争期間中の契約訴訟の判決に従って執った行動だった。このニュースが伝わると、中国では当然ながら喜ぶ人がいる一方、日本政府は憤り、日本企業は懸念を隠せない。『ウォール・ストリート・ジャーナル』のような国際社会において知名度の高い経済メディアも、論説で「中日紛争、いよいよ経済分野に進出」と展望した。

この船の差し押さえという手段が、中国政府の意向を受けての行為なのかどうか。このようなことが起こって、今後、中国の民間による対日賠償請求訴訟が大量に起こるのだろうか。また、今回の船舶の差し押さえという強制執行と同様に、日本企業の在中国資産は判決後の賠償、差し押さえのターゲットになるのか。日本企業はこうした問題に強い関心を寄せている。

海事訴訟として差し押さえは珍しいことではない。しかも商船三井に対する訴訟は戦後ずっと継続してきたことなので、上海では強制執行されたものの、その他の訴訟は少なくとも中日国交正常化までに行われておらず、国交正常化による相互の請求権の喪失とは違う。中国の現場から商船三井の件について報告する。(在北京ジャーナリスト 陳言)

決して珍しいことではない
海事訴訟による差し押さえ

 歓喜のムードにひたっている大衆は、日本企業の船舶を差し押さえたことに中国政府の「覇気」を感じ、インターネットでは「ようやく中国政府が強さを示した」と誇るような書き込みが散見される。彼らにとって、このような船舶の差し押さえは、滅多に見られない出来事であると映っている。