そして2年目を迎えた今年、農地を3反に拡大したものの、まだ経済的に自立できるまでには至っていない。農業をやるかたわら、大地の恵ファームで販促の仕事を手伝ったり、2013年8月からはNPO法人尊徳ファーム運営協議会で事務局長の仕事も掛け持ちしている。ここでは、関東農政局の都市農村共生・対流総合対策交付金を受けながら、グリーンツーリズム(農山村地域において自然、文化、人々との交流を楽しむ滞在型の余暇活動)による地域活性化を推進する業務に携わる。

 現在、宮下さんは朝4~5時に起床、すぐに畑に行き、暑くなるまで草むしりなどの農作業をした後、尊徳ファーム運営協議会の事務をこなし、再び畑に戻って日が沈むまで働く毎日だという。

「朝起きるのも寝るのも早いですけど、人間って本当はこう生きるべきなんだな、というのが実感です」

 広告代理店時代とは180度異なる、自然に近い暮らしが大いに気に入っているようだ。

大地のパワーで育てる
“オーガニック”にこだわり

 宮下さんも関わっている大地の恵ファームは、毎月第二土曜日・日曜日に東京・勝どきで定期開催されている「太陽のマルシェ」に毎回出店している。これは、全国から約100店がご当地野菜や旬な野菜、果物、加工食品を持ち寄る農産物販売イベントで、最近では延べ1万8000人超が来場する日本最大級規模の市場となっている。

 この5月10・11日の開催では、大地の恵ファームは真岡特産のニンニクをはじめ、ナス、キュウリ、ネギなどの新鮮な野菜を出品し、人の波が途切れない人気店になっていた(写真参照)。筆者も特大のニンニクを買い、行きつけの小料理屋で素揚げにしてもらって他の客にふるまったところ、「甘みとコクがぜんぜん違う!」と大好評。たしかにウマイ!

「太陽のマルシェは、消費者の声を直接聞ける貴重な機会なんです。お客様と話していると、じつに多くの人が安全でおいしい野菜を求めていることがよくわかります。今後もマーケティングや都内の飲食店への販路拡大の場として、このイベントを活用していきたいと思っています」

 宮下さんは「本当に栄養価が高く、おいしい野菜を消費者に届けたい」という思いから、化学合成農薬や化学肥料に一切頼らず有機肥料のみを使用、土壌の持つ力を生かして栽培するオーガニック(有機栽培)に取り組んでいる。これが宮下さんの農業へのこだわりなのだ。

始めてみてわかった
「農業はクリエイティブな仕事」

 大地の恵ファームは大人気だが、休耕農地を借りて土の改良から始めた宮下さんの農業はまだ始まったばかりだ。

「一番うれしかったのは、畑でテントウ虫やカマキリを見たときですね。土を掘ったらミミズも出てきました。これこそ、本来の健康な土の状態に戻ってきている証しです。これは、私も販売に携わった友人の実家の天然堆肥のおかげでしょう。何年もかかる土の改良が短期間ででき、3ヵ月くらいで虫が来てくれました」