欧米企業に顕著な
コンサルという免罪符
並木 それでも欧米に比べれば、コンサルティングの活用という風土がいまだに根付いていないような気がします。
堀 その背景には、やはり日本特有の問題があります。
一つは、日本の場合、株主からのプレッシャーが弱いという点が挙げられます。欧米では利益を出せという株主からのプレッシャーが非常に強い。そうなると利益を出すためにあらゆる手を尽くす。コンサルティング・ファームの起用も選択肢として入ってくるわけです。
それからもう一つ、欧米企業ではボードが社外取締役を中心に構成されるのに対し、日本はあくまで(社内の)取締役が中心であることも影響しています。欧米企業では「一生懸命やったけど業績が良くなりませんでした」などと社長が言っても社外取締役たちの理解を得られるはずもなく、すぐにクビになってしまうでしょう。でも、マッキンゼーやBCGを雇って、彼らからの提案に基づいて事業を進めています、と説明すればとりあえずは納得してもらえる。実は、コンサルティング・ファームの起用というのが“免罪符”の役割を担っている側面があるんです。
並木 なるほど。彼らが言うなら正しいに違いない、と思ってくれるわけですね。日本と欧米では、ファームの持っているステータスが違う、と。
堀 そうです。もちろん実際問題として、ファームが採用する人材のレベルが高く、コンサルタントと一緒に考えた方が良い答えが導き出せそうだという期待感やワクワク感があるのも事実です。コンサルタントのスキルという意味でも、日本は改善しなければならない点があると思います。
並木 どのような点でしょうか?
堀 大学受験での数学の問題を思い出してみてください。数学の応用問題が解けない人がいる。それはなぜかというと、問題の「意味」が分からないから。問いの意味さえ分かれば、数式を当てはめて答えを導き出すことは決して難しいことではありません。つまり、「何が問題か」を把握することが一番の問題なんです。でも日本の学校教育は、答えを求めさせることしかしないから、問題を定義する力が身につかない。会社でも、みんな一生懸命になって答えばかりを探している。本当は、問題が何かを考えるべきなのに。
並木 私は15年近くコンサルタントをやってきて、結果を出してもあまり感謝されないということを何度か経験してきたんです。堀さんのお話を聞いて、もしかしたら、間違った問題に正しい答えを出していたから感謝されないのではないか、と気付かされました。