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2030年のビジネスモデル

社長が年間60泊もキャンプに出かけ、
未来をつくる経営

齊藤義明 [ビジネスモデル研究者、経営コンサルタント]
【第18回】 2014年5月22日
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 山井さんは、ユーザーとの初のキャンプイベントから戻った月曜日、即座に経営改革を発表した。従来の問屋取引を止め、一商圏一店舗にして、その店舗にはスノーピークの全商品を展示・販売する。

 社内には猛反対が起こったが、山井さんは先頭に立って販売店を1000店舗から250店舗に絞り込んだ。地域によっては車で1時間以上かけないと行けない店かもしれないが、そこに行けばスノーピークの全商品があり、世界観が感じられるように変えた。販売チャネルが短縮化したことによって、流通マージンも低下、実売価格を大幅に落とすことも可能になった。この改革が功を奏し、スノーピークは2000年から増収増益に転じた。

壮大なキャンプ場に佇む
「野遊び」の本拠地(ヘッドクォーターズ)

 さらに山井さんは、3年前の2011年4月、新しいヘッドクォーターズを完成させた。ユーザーにThe Snow Peak Wayを実感してもらうためには、恒例のキャンプイベントだけではもはや限界があると感じ、スノーピークの本社自体を壮大なキャンプ場の中に建て、ユーザーや取引先の方々に、いつでも身近にThe Snow Peak Wayを感じてもらえるようにしたのである。敷地面積5万坪のキャンプ場の中に、「野遊びの本拠地」として本社がそびえる景観は圧巻である。

スノーピークのヘッドクォーターズ

 新ヘッドクォーターズへの総投資額は19億円。スノーピークの事業規模からみると非常に大きな金額であり、冒険とも言える。スノーピークはそれまで無借金経営で、自己資本比率が90%を超えており、「絶対に倒産しない不沈空母」だと誰もが安心しきっていた。

 山井さんはその安定を敢えて壊したのである。社内には、成長しないとつぶれるかもしれないという危機感が走った。スノーピークの組織文化は一段と強くなり、新本社構築からの3年間はなんと年率20%の勢いで成長を加速している。

燕三条の中小企業の技術集積をつなぐ

 「これだけ多くのアウトドア製品を作っていて、設備投資はいったいどのくらいしているのですか?」、海外の企業経営者は驚いて山井社長に聞くそうだ。「1兆円くらいかな」、山井さんは冗談を返して笑う。

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齊藤義明
[ビジネスモデル研究者、経営コンサルタント]

ビジネスモデル研究者、経営コンサルティング会社勤務。政策・経営コンサルティングの現場でこれまで100本以上のプロジェクトに関わる。専門は、ビジョン、イノベーション、モチベーション、人材開発など。

2030年のビジネスモデル

未来のパターンを作り出す企業は、はじめは取るに足らないちっぽけな存在だ。それゆえに、産業の複雑な変化の過程で、その企業はときに死んでしまうかもしれない。しかし個別企業は死んでも、実はパターンは生き続け、10年後、20年後、新しい現象として世の中に広がる。2030年の日本につながる価値創造のパターンとは何か。現在さまざまな領域でその萌芽に取り組む最前線の挑戦者たちとのダイアローグ(対話)。

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