商品には「価値」も必要

 ただし、「使用価値」さえあれば商品になるか(他人が買ってくれるか)というと、そうではありません。ぼくらビジネスパーソンは、自分が売ろうとしているモノ・サービスの「メリット」を徹底的に考えるよう、教育を受けています。

「お客様にどんなメリットがあるのか?」
「顧客視点に立て」
「お客様に喜んでもらえれば、必ず選ばれる」

 このようなフレーズがオフィスの中で頻繁に交わされています。これらはつまり「使用価値」を考えろということを言っているわけです。ただ、多くの場合、ここでは「使用価値さえあれば、お客さんに買ってもらえる」ということを言っています。

 しかし、「使用価値」だけでモノは商品になりません。「価値」がなければいけないのです。そのモノに人の手が加わっていないといけないのです。

「使用価値」とあわせて「価値」も持っていなければ商品にはなりません。たとえば、キャンプ場の近くに流れているきれいな小川の水が売れない理由がここにあります。山奥のきれいな小川の水は、健康に良さそうなお水ですね。ミネラルもたっぷり含んでいそうで、飲むメリットは十分にあります。

 でもそれを、すぐ隣のキャンプ場で売ろうとしても、間違いなく売れません。なぜか?「価値」がないからです。

 湧き出ている隣で売る「山奥のきれいな小川の水」には、ほとんど労力がかかっていません。ということは、相手(お客さん)もなんの苦労もせずに手に入れることができます。だからわざわざ買わないのです。

「価値」がない(労力がかかっていない)ものは、いくら使用価値があっても、売りものにならないんですね。このポイントも非常に重要です。むしろ、こちらの方が大事かもしれません。

 商品にいくらの値段がつくか、さらに、ぼくらの給料がなぜその金額なのかを説いてくれるのは、じつはこの「価値」なのです。この非常に大切なポイントを理解するためには、次の法則を解明しなければいけません。