5月の連休直前、ソフトバンクがまた“隠し玉”を出してきた。

 中国で若者の注目を集めていたインターネット企業(オーク・パシフィック・インタラクティブ/OPI)を傘下に収めることで、合意に達していた事実が明らかになったのだ。

 北京を拠点とするOPIは、中国最大・2200万人の会員を擁する学生向けSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)「校内網(シャオネイ)」で知られる新興企業で、ネット掲示板やブログ、動画共有サイトなども手がけている(日本最大のSNS「ミクシィ」会員は約1300万人)。

 2011年4月までに総額約400億円を投じる今回の買収は、単にソフトバンクが中国最大のSNSを手に入れるということにとどまらない。これでグループが出資する企業は、中国最大のBtoB(企業間取引)企業のアリババ・ドットコム、最大のCtoC(消費者間取引)企業のタオバオ、そしてSNSのOPIとなり、各分野で1位の企業ばかりを押さえたことになる。「残るは低迷するヤフーチャイナ(検索)のテコ入れだけ」(関係者)なのだ。

 中国では、今年中にネット利用者の人口が2億2000万人を超えると予想されており、米国や日本を抜き去って世界1となる。13億人の人口を抱える急成長市場では、日本とは比較にならない“爆発力”が期待できる。

 日本企業にたとえると、専門商社群(企業間取引)と楽天(電子商取引)とミクシィ(SNS)を全部合わせたような企業連合であり、ソフトバンク社内で孫正義社長が好んで言うところの「ダントツNo.1」も夢ではなくなる。

 その一方で、“投資会社的な顔”も同社の影響力を下支えしている。たとえば、オンラインゲーム最大手の盛大(シャンダ)や、屋外ディスプレイ広告最大手のフォーカスメディアなどは、株式上場後に大半を売却したとはいえ、今でも戦略的に少数株主であり続けている。

 現在も約33%の株式を保有するアリババへの投資では、01年に出資した約20億円が6年間で約550億円(約27倍!)に化けた(07年11月の上場時)。

 派手な花火を好むソフトバンクだが、中国市場では静かに存在感を増す構えである。

(『週刊ダイヤモンド』編集部 池冨仁)