「三陽商会がバーバリーから契約を打ち切られ、撤退するらしい」。今春、百貨店業界を駆け巡ったうわさに、特に同ブランドを頼みの綱とする地方百貨店は騒然となった。「週刊ダイヤモンド」6月7日号特集「百貨店包囲網」から特別公開する記事でお伝えしよう。

バーバリー・ブルーレ-ベルの店舗。中国人にも人気で、地方百貨店にとって頼みの綱だ
Photo by Yasuhisa Tajima

 今春、あるうわさが百貨店業界を駆け巡った。「三陽商会がバーバリーから契約を打ち切られ、撤退するらしい」。衝撃を受けた地方百貨店の担当者は、すぐさま確認に走った。

 三陽商会は1965年にバーバリーのコートの輸入を開始。70年からはライセンス契約を結んで、日本国内向けにコートやスーツの企画から生産、販売まで進めてきた。

 しかし2012年の秋ごろ、バーバリー側が高級ブランドとしての地位を確立するため、世界統一の商品を展開したいとの意向を伝えてくる。両社は交渉を続けてきたがまとまらず、15年6月をもってライセンス契約は終了することになった。

 これにより、困ったのが百貨店だ。というのも、三陽商会は百貨店を中心に300店以上の店舗を展開しており、「バーバリーは非常に人気が高く、売り場には必ず欲しいブランド」(地方百貨店幹部)だからだ。

 中でも、三陽商会とバーバリーが共同開発した日本独自のブランド、「バーバリー・ブルーレーベル」「バーバリー・ブラックレーベル」はまさに“ドル箱”。サイズはもちろんデザインも日本人仕様となっており、人気が高いのだ。

 この両ブランド、実は地方で売れている。店舗別売り上げの上位には、金沢市の大和や福岡市の岩田屋など、地方百貨店がずらりと顔をそろえる。それでなくても、地方百貨店は人気商品の確保が難しい中で、安定的に収益をたたき出す「頼みの綱」(同)だったというわけだ。

 三陽商会によれば、両ブランド共に「バーバリー」の冠は外すものの、店舗は継続していく方針というが、地方百貨店の心は穏やかではない。

(週刊ダイヤモンド編集部)