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2030年のビジネスモデル

不器用だけど一生懸命――沖縄の焼き肉店、キングコングが実践する、ゆがんだ社会や組織を治すヒント

齊藤義明 [ビジネスモデル研究者、経営コンサルタント]
【第19回】 2014年6月12日
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 ひとりひとりがしゃべるのは確かに遅くて、勉強会はゆっくりとしたテンポで進むが、2時間ほどの間に、勉強や課題共有だけに留まらず、それに対する各自の行動計画にまできちんと落とし込まれる。世の中には、2時間やっても誰が何をするのか全く決まらない会議もあるが、一体、どちらが非効率なのだろうか。

 この勉強会、最初はBIメンバーを除き、健常者だけで話し合っていたそうである。自ずと、どうやって障がい者を助けるかといった話し合いが多くなり、「なんだか批評しているみたいな感じ」だったという。そこである時から思い切って、BIメンバーも混ぜて話し合うことにした。すると、むしろ健常者のほうがBIメンバーから学び、影響を受けることのほうが多いことに気付いた。当初抱いていた、教える側、教えられる側という区分も消えていき、健常者も障がい者も、互いに学び、人間的に豊かになっていった。

ひきこもりの経験を跳ね返した若者たち

 BIメンバーと一緒に働き、大きな人間的成長を遂げている若い従業員たち、興那嶺捺美さんと村山雄喜さんに話を聴いた。二人は中学卒業後に働いていて、ひきこもり経験がある。しかしキングコングにはもう3年以上勤めており、まだ二十歳そこそこの年齢であるものの、職場をひっぱるリーダーとなっている。発言内容は2人とも異口同音なので、ここでは興那嶺さんの発言を紹介する。

――BIメンバーと一緒に仕事をするようになって、職場の雰囲気はどう変わりましたか?

 「BIメンバーが入ってから、やりやすくなった。勉強会を通じて、それぞれの気持ちや取り組みがわかりあえる。3年前に比べて、職場の空気や人間関係が明るくなった。全員でやっているという空気が生まれている」

――BIメンバーから学んだことは何ですか?

 「あたりまえのように継続する力。楽しいと思ったら生き生きと働く元気なところ。素直なところ。まっすぐに突き進むところ。人は仕事に慣れてくると、なあなあになってくるから、そこで成長がストップしてしまう。でもBIメンバーは、うまくいったら、もっとうまくなりたいって感じ。いったんスイッチが入ったら、どんどん上へ行く」

 「自分が落ち込んでいる時、店長に何を言われてもダメ(笑)。でもBIメンバーの前向きさを見て、立ち直ることができる」

――最後にひとつ聴きたいのだけど、将来、どんな人になりたい?

 「中卒、ひきこもりでも、仕事は楽しいってことを伝えたい」

 とりわけ最後のビジョンは心に響いた。

 大石店長にも、将来の夢を聴いてみた。

 「会社を通じて学校を作りたい。障がい者、ひきこもり、二-ト、家庭環境が悪い人などに、寮生活などもセットにして、仕事って楽しいということを教えたい」

 みんなの想いが同じ方向へ向かっていると感じた。

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齊藤義明
[ビジネスモデル研究者、経営コンサルタント]

ビジネスモデル研究者、経営コンサルティング会社勤務。政策・経営コンサルティングの現場でこれまで100本以上のプロジェクトに関わる。専門は、ビジョン、イノベーション、モチベーション、人材開発など。

2030年のビジネスモデル

未来のパターンを作り出す企業は、はじめは取るに足らないちっぽけな存在だ。それゆえに、産業の複雑な変化の過程で、その企業はときに死んでしまうかもしれない。しかし個別企業は死んでも、実はパターンは生き続け、10年後、20年後、新しい現象として世の中に広がる。2030年の日本につながる価値創造のパターンとは何か。現在さまざまな領域でその萌芽に取り組む最前線の挑戦者たちとのダイアローグ(対話)。

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