諦観が漂う日本社会だからこそ
コンサルという存在の輝きが増す
並木 1973年の創業以来、結果主義を追求し続けてきたベインですが、具体的にはどのような形で「結果主義のコンサルティング」は行われているのでしょうか?
火浦 私たちは、プロジェクトに着手する前に「リザルト・ステートメント」という形で明確に目標設定をするようにしています。これが今回のプロジェクトで目指す成果目標だということを事前に明らかにしておいて、最後にクライアントに採点をしてもらう。最初に決めたゴールに届かなければフィーを大幅に減額したり、時にはゼロにすることもあります。
もう一つの例では「リザルト・デリバリー」というアプローチ手法も開発しました。その一部の事例ですが、会社の到達点をイメージする段階で、ミーティングにグラフィック・ファシリテーターに加わってもらい、目指すべき姿を具体的な「絵」として表現するんです。クライアントとともに目指す場所を一枚の絵として共有するわけで、論理や数字が並んだ分厚いプレゼン資料よりもはるかに分かりやすい。左脳に訴えるだけのアプローチだけではなく、右脳に訴えるアプローチも必要なんですね。
マッキンゼーとBCGというトップ2社がいる中で、ベインは挑戦者として新しいこと、イノベーションを起こしていかなければならないという気持ちが非常に強いですよ。
並木 なるほど。今ご紹介いただいたコンサルティングの手法は、大きなイノベーションだと言えますね。そんなベインが求めているのは、どのような人材なのでしょうか。
火浦 実は、東京オフィスの新卒採用では、海外にいる日本人を多く採用しています。例えば、海外で過ごしてきた学生に「この夏、どう過ごしてたの?」と聞くと、「アフリカに行ってNPOの活動に参加してきました」と言う。その行動が将来の展望を伴ったものでなくても、何らかの問題意識を持って現場に飛び込んでいくという姿勢は評価に値しますよね。一方で日本の大学生はと言うと、一概には言えませんが、つつがなく学生生活を過ごすことの方が大事で、行動力や社会問題に対する大局的な視点が欠けている面があるような気がします。
それは若者だけの問題ではなくて、実は中高年以上の大人たちの問題でもあります。ピラミッド構造の日本の会社は、年齢を重ねれば重ねるほどポストがなくなるので、諦めを強いる仕組みになっている。有能で意欲のある人はどんどん海外へ出て行って、諦めざるを得なくなってしまった中高年たちと問題意識の希薄な若者が日本に残っているような状況が生まれているわけです。何となく「こんなもんだろう」「これぐらいできればいいじゃないか」といった空気が漂っていて、自分の力で壁を打ち破ることができない人が増えている。
私は、そんな日本社会だからこそ、コンサルタントの存在が輝きを増すと思っています。何度でも「できる。絶対できる」と言い続けるのがコンサルタントの仕事ですから。