『不機嫌な職場~ なぜ、社員同士で協力できないのか』(講談社刊)がひとつのきっかけになったのならうれしいことですが、最近、職場を活性化するための施策を紹介する本が増えたように思います。
職場を元気にするためには、本当にいろいろな工夫があるし、私が実際に研修をやっている際に、思いもよらないアイデアがたくさん出て来ることもあります。「いいな」と思うことはとりあえずやってみることも大切でしょう。
ただ、こうしたアイデアを「面白そうだから」と言ってやみくもに実施しても、うまくいかないことが多いもの。また、飲み会や運動会、社員旅行を復活させてコミュニケーションを円滑にしようと試みても、そこに集まる社員がネガティブな感情のまま参加するのでは、うまくは行きません。
何のための取り組みなのか、その背景にある“思い”に共感できなければ、「忙しいのになぜこんなことをしなければならないんだ」「経営者や上司は現状を理解していない」などと、不満や不信を増やすだです。
不機嫌な職場を治療していくためには、「周囲の人たちの心の扉を半分だけでも開けてもらえるようにすること」が必要です。「お互いに信じられない」「自分が追い込まれてしまうのではないか」という不安を持ったままでは、人は何も受け入れようとはしません。
「不機嫌な職場」に横たわる
3つの構造的な要因とは?
そう考えると、まず最初に“今起きていること”を正しく理解し、それが実は特別なことではなく、どんな職場でも、どんな人にでも起きてしまうものであること、そしてその背景には、お互いが関わり、協力し合うことを妨げてしまう構造的な要因があることを皆が共通に理解し、「そんなものなんだ」と心を楽にすることが必要です。
『不機嫌な職場』を読まれた方は、すでに共有していただいていると思いますが、1990年代後半からの職場をめぐる環境変化は、そもそも人が関わり合い、協力し合うという行動を阻害する構造的な要因を生み出してしまいました。今回は、「その構造的な要因とリスクとは何か」について、詳しく説明しましょう。
まず第一の構造的な要因は、「関わり合い、協力し合う対象や範囲が狭まってしまったこと」にあります。それまでの日本企業は、ある意味、仕事の責任や範囲が大きく曖昧で、お互いにすり合わせをしたり、調整しなければ仕事が進まないということが多かったものです。