大幅減となった2月の雇用統計が如実に示すように米国は景気後退局面に入りつつある。昨年夏のサブプライムショック以降続いてきた、社債、証券化商品などの直接金融市場の縮小。ここにきてその動きに拍車がかかりそうだ。こうした信用収縮は企業の資金パイプを詰まらせ、米国景気の頭をさらに押さえつける。
米国経済は急速に坂道を転がり始めた。
3月7日に発表された2月の非農業部門の雇用者数は前月比6万3000人減と5年ぶりの減少幅となった。景気後退懸念が再燃し、ニューヨークダウは7日、10日と大幅に続落した。
今後、転落するスピードを加速させる材料は枚挙にいとまがない。その一つが、止まる気配の見えない直接金融市場の信用収縮。サブプライムローンの焦げつきに端を発した昨年八月の金融市場の混乱以降、収縮が始まったが、ここにきてさらに拍車がかかりつつある。
米国の主要銀行はサブプライムローン関連で巨額の損失を計上した。損失を抱えたぶん、リスクを回避しようと融資に対して慎重になり、貸し出しを抑制する。金融機関の貸し出し姿勢は昨年後半以降、厳格になる一方である。
購入した社債を担保に
カネを借りられなくなった
こうした間接金融市場が機能しなくなった場合、通常であれば、社債やCP(コマーシャルペーパー)などで資金調達する直接金融市場の出番になる。しかし、米国ではもはや、直接金融市場も機能不全に陥っている。ここに現在の米国の信用収縮の深刻さがある。
社債のスプレッド(国債との利回り格差)期間5年ベースで比較した上のグラフに見るように、過去20年間の最高水準にまで達している。BBB格に至っては、基準となる国債金利より2%強も高い水準となっている(3月7日現在)。