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技術と制度が不可分になる時代

佐藤一郎 [国立情報学研究所・教授]
【第14回】 2014年6月24日
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 Googleは製品発表後、アプリケーションからGoogle Glassの顔識別技術を使用することを禁止することを発表した。ただし、コンテンツ撮影問題や前述のプライバシー問題の取り扱いは明確になっていない。なお、マナーや自主規制で制限しても、悪意をもった利用者の不適切な行動を押し止めることは難しいだろう。

 しかし、これらのウェアラブルカメラのプライバシー問題やコンテンツ盗撮の問題は以前から指摘されていたことである。その意味ではGoogleは当初から、これらの問題を考慮した製品開発を検討できたと思うし、ウェアラブルカメラの開発・販売を検討している企業があれば、Google Glassを他山の石として、この問題に真摯に向き合うべきだ。

 今後、ウェアラブルカメラは、その利用者の自主規制が難しいとしたら、販売の前にウェアラブルカメラの利用に関わる法制度案を用意して、各国に法制化を提案するなど、製品の研究開発をすると同時に、その利用に伴う問題を最小化する制度設計もなされるべきである。

自動運転にも制度設計は不可欠

 2014年5月末にGoogleが自動運転用の自動車の製造・販売を発表した。その自動車にはハンドルやアクセルおよびブレーキペダルがなく、まさしく自動運転を前提にしている。国土交通省が発表した自動運転に関わるロードマップでは、2020年代初頭には高速道路などでは、原則、自動運転が目標に掲げられている。

 さて、ここで問題なのは自動運転中に発生した事故の責任だ。自動運転に部分または完全に頼っていたとすると、乗車している人に全面的な責任があるといえるのか。完全自動運転(運転に人間が関与しない運転)をしているのは自動車であり、その自動車を作ったメーカには責任がないといえるのか、など従来の自動車では考えられない問題を生み出す。一方で、一部のメーカではあるが、自動運転中に新聞が読めるなど、つまり自動運転中に、乗車している人には注意義務がないことをイメージさせる映像を出したりする。

 いずれにしても事故時の責任を明確にしておかないと、自動運転は社会に受け入れられる可能性は低いだろう。メーカは自動運転可能な自動車を製造・普及させたいのであれば、自動運転技術の研究開発だけでなく、その事故時の責任についての制度設計に関わるべきある。また現実問題としては自動運転を想定した損害保険制度も必要である。

 ところで、先述のGoogleの自動車は、ハンドルやアクセルおよびブレーキペダルはないが、映像を見ると運転席と助手席の真ん中に赤いボタンがみえる。確証はないが、おそらく緊急停止ボタンであろう。もちろん、プロトタイプだから搭載している可能性はあるが、仮に製品にも緊急停止ボタンがつくのであれば、事故が発生したときに乗車している人は事前に自動車を停止させられたわけだから、何らかの責任がかかるともいえる。

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佐藤一郎
[国立情報学研究所・教授]

国立情報学研究所アーキテクチャ科学系教授。1991年慶応義塾大学理工学部電気工学科卒業。1996年同大学大学院理工学研究科計算機科学専攻後期博士課程修了。博士(工学)。1996年お茶の水女子大学理学部情報学科助手、1998年同大助教授、2001年国立情報学研究所助教授、を経て、2006年から現職。また、総合研究大学院大学複合科学研究科情報学専攻教授を兼任。
専門は分散システム、プログラミング言語、ネットワーク。

佐藤一郎のパースペクティブ

分散システムの研究を核としつつ、ユビキタス、ID、クラウド、ビッグデータといった進行形のテーマに対しても、国内外で精力的に発言を行っている気鋭のコンピュータ・サイエンス研究者が、社会、経済、テクノロジーの気になる動向について、日々の思索を綴る。

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