東京電力福島第1原子力発電所の事故以降、業績の不透明さが漂う電力会社。そんな中で、中部電力が今期の業績見通しを黒字にした。その背景を調べた。 本誌・
「私が先頭に立って、強い決意で経営効率化を推し進めることで、何とか黒字化を実現していきたい」
4月末に開かれた2014年3月期決算会見の席上、中部電力の水野明久社長はこう述べた。前期までの3期連続の経常赤字から脱却して、今期は黒字化を必ず達成するという宣言だった。
この日、中部電力が発表した15年3月期の業績見通しでは、営業利益で650億円、経常利益で200億円の黒字を予想した。
一方で、他の電力会社は、売上高の予想は公表したものの、利益の見通しについては、事業環境が不透明なことから「未定」としている。つまり、黒字の見通しを示した唯一の電力会社が中部電力だったのである。
電力会社では、東京電力福島第1原子力発電所の事故以降、損益の見通しを公表しないことが常態化していた。それだけに、業界内では「まさか中部があそこまで踏み込むとは」(電力会社関係者)と驚く声もあった。
なぜ他の電力会社が業績を見通すのが難しく、中部電力だけが黒字予想を掲げられたのか。
その理由を知る前に、まず電力業界を取り巻く環境を押さえておく必要がある。
福島第1原発事故以降、全国各地の原発が停止した。このため、電力各社は火力発電をフル稼働させ、電力の需給バランスを保っている。しかし、火力発電の燃料費がかさんだことから、各社とも巨額の赤字に苦しんでいる。