ダイヤモンド社刊 1890円(税込) |
事業を知る一歩は顧客が誰かを考えることである(『現代の経営』より)
「事業は何かを知る第一歩が、顧客は誰かを考えることである。次に、顧客はどこにいるか、顧客はいかに買うか、顧客にいかに到達するかを考えることである」(『現代の経営』)
さらに考えるべきことが、顧客は何を買うかである。キャデラックを買う人は、交通手段を買っているのか、ステータスを買っているのか。キャデラックは、シボレーやフォードと競争しているのか、ダイヤモンドやミンクと競争しているのか。
次が、顧客は何を重視するかである。これまでの経済理論は、ほかに答えのありえようはないとばかりに、一語をもって答える。価格である。ドラッカーは、この答えを間違いとする。
価格が重要な要素でない製品はない。しかし、第一に価値としての価格が単純な概念ではない。下取りを伴って販売される自動車市場では、価格は新車と一次中古車、二次中古車、三次中古車のあいだで変動する価格差の総体である。
第二に価格は価値の一部にすぎない。価値には耐久性、故障率、信用度、純正度など製品の質にかかわるあらゆる種類の要素がある。
第三にサービスをはじめとする顧客側の価値観がある。主婦は電化製品を買うとき、アフターサービスを気にする。
「顧客が価値と考えるものはあまりに複雑であって、彼らだけが答えられることである。憶測してはならない。顧客のところへ行って答えを求める作業を体系的に行なわなければならない」(『現代の経営』)