相手に合わせることは
自己中心的?

古賀史健(こが・ふみたけ)
ライター/編集者。1973年福岡生まれ。1998年出版社勤務を経てフリーに。これまでに80冊以上の書籍で構成・ライティングを担当し、数多くのベストセラーを手掛ける。臨場感とリズム感あふれるインタビュー原稿にも定評があり、インタビュー集『16歳の教科書』シリーズは累計70万部を突破。20代の終わりに『アドラー心理学入門』(岸見一郎著)に大きな感銘を受け、10年越しで『嫌われる勇気』の企画を実現。単著に『20歳の自分に受けさせたい文章講義』がある。

古賀 アドラー的に言えば、嫌っている人は、小林さんを嫌うことによって、何かしらのメリットを得ているはずなんです。その人たちは、「嫌い」という感情や意見を表明することによって、なにかしらの目的を達成して気持ちよくなっているのです。だからイライラさせているとか、そういうことではおそらくない。そしてそのことはその人の課題なので、小林さんはタッチすることができないと思います。

岸見 小林さんが嫌われることで、他のアナウンサーが嫌われずに済んでいると考えることもできます。

小林 嫌われることで誰かに貢献しているということですか(笑)? そういえば、2位はTBSの後輩なんですよ。それを見て、自分で良かったなと少し思いました(笑)。

岸見 他のアナウンサーさんからは、「ありがとう」と思われているかもしれませんね。

小林 なぜ人はマイナスのエネルギーに引っ張られるのでしょうか。

岸見 引っ張られるのではなく、向かって行っているのです。引っ張られると思っている限りは、自分で責任を取らなくて済むじゃないですか。ですから、アドラー心理学では引っ張られる「目的」があると考えます。マイナスに向かっているのには目的がある。

小林 すごい! 前編からの話も含めて、全部つながっているように思います。私はずっと自分のことを、「相手に合わせてしまう人間」だと思っていました。でも、相手に合わせることって、実は自己中心的な態度なのではないかとお話を聞きながら感じるようになりました。自分のことが好きでナルシシストだという自己中はわかりやすいですが、そうではなくて嫌いであるが故に自分に気持ちが向き過ぎてしまうというか。

岸見 周りの人はあまり今回の1位事件を気にしていないのでは。

小林 そうなんです。マネージャーもニコニコしているだけだし、友だちに言っても「1位なんてなかなか取れないよ!」「注目されているんだよ」って言われるだけでした(笑)。